【事例】給食で牛乳が飲めない子どもの支援と実践

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本記事では、これまでサポートしてきた事例を取り上げながら、給食指導についてのヒントをお伝えしてきます。

今回取り上げるのは「給食で牛乳が飲めない子どもの支援と実践」ということで、学校給食において毎日出てくる「牛乳」を飲めるようになる支援についてです。

どのような考え方で支援のアプローチを考え、先生に何を実践してもらい、牛乳を少しずつ飲めるようになっていったのか等を、取り上げていきたいと思います。

特別支援学校の幼稚部の先生からの相談でしたが、特別支援学校(学級)の子どもかどうかに関わらず、牛乳が飲めるようになる方法の1つのアプローチとして参考になるはずです。それでは、以下よりお読みください。

事例:給食で牛乳が飲めない子

まず、プライバシーに配慮した範囲で、先生からヒアリングした、相談前のお子さんの状況を紹介します。

  • Aくん、5歳の男の子
  • 自閉症、多動症の傾向有り
  • 牛乳が飲めないので、下校前にカルピスに混ぜて飲む
  • 白米を食べる為には、家から持参した鮭フレークが必要…等

給食は基本的に「自分から食べる」ということが少なく、促されて食べることが殆どということでした。また、普段からおかずなどは白米に隠し、おかずが入っていることが分からない形で、食べてもらっているということでした。牛乳にカルピスを混ぜる点でも「子どもに分からないように混ぜている」ということでした。
子どもが食べないものをごはんにバレないように混ぜ込む先生
今回ご相談いただいた先生は、特別支援学校でのお勤めが長いということでしたので「食べられない事はわがままではない」ということは十分に理解できている一方で「適切な指導方法が分からず迷いがある」という事を悩まれていた様子でした。

こういった事前情報を頂いた上で、支援に取り組んでいきました。

指導の基本的な考え方

まず、指導をする際の基本的な考え方として、大切なことが主に3つあります。

それは、

  1. 食べられない理由を特定すること
  2. 好きな感覚から広げていくこと
  3. 決して騙した形にはしないこと

です。

また、それ以前に日々の給食時間の中で「食べる事は楽しい」という雰囲気を作り上げていくことが大切です。(この土台がなければ食が進むことはありません)

なぜ、この3つが大切なのかということも解説しながら、以下より今回のケースで先生にしたアドバイスについて紹介していきます。

具体的なアドバイスについて

まず、1番最初にしたアドバイスは「騙した形で食べさせない」ということでした。

具体的には、先に紹介したように「おかずなどを白米に混ぜ込んで食べさせている」、「牛乳にカルピスを本人には分からないように混ぜている」ということでしたので、それをやめた方が良いというアドバイスをしました。

理由としては、仮にこの状況で食べられていたとしても、子どもからすると「自分はおかずを食べている」という自覚がない状態なので、偏食が改善されているわけではなく、毎回そのやり方をしなければ食べることがないという事。そして、もし仮にいつか「何か変なものが混ざっている」と思われてしまった時に、これまで食べていた「白米」ですら、食べなくなってしまうことが考えられるからです。

ですから、混ぜ込む際などは事前に必ず伝えるようにということをアドバイスをしました。

そうしたところ、

ご飯におかずをのせるときも、本人の目の前で、「お肉入れるよ」「卵入れるよ」と元のおかずを指差しながら入れるようにしてみています。口に入れるときには、ほんの少しおかずが見える程度にご飯を乗せて食べています。まだ完全におかずが見えていると口に運ぼうとしないことが多いですが、ごはんの量が多いとおかずも一緒に口に運んでくれるので、すごいなぁ!とベタ褒めしています。そうしたら、興味をもって食べたおかずを指でつんつん、とするようになりました!

と、少しずつごはんに混ぜていない状態のおかずも、自分から触るようになってきたといいます。

この「触る」というのはとても良い傾向で、子どもは「知らない」→「知っている」→「興味を持つ」→「触ってみる」→「食べてみる」というステップで、苦手なものや見慣れないものを食べられるようになっていきます。指導する立場の方がこのステップを知らないと「触って遊んでいる」と勘違いしてしまうので、こちらも知っておくと良いでしょう。

また、いただいた情報から「見た目」によって食べる食べないを判断していることが特定できました。そして「味覚鈍麻」の傾向があるかもしれないという話もしました。味が濃くないと美味しく感じないので、白米を食べる時に鮭フレークなどが必要だったり、牛乳もカルピスを入れるということが必要なのではと想定したのです。

ですので、「鮭の切り身が給食で出た時には、ほぐして見た目をフレーク状にしたら、食べるかもしれない」ということを伝えて、実践してみたところ口に入れることができた(が、味が薄かったのか美味しくないと口から出した)」ようでした。先生的には「鮭フレーク以外の鮭を食べると思わなかった」ようでビックリされていた様子でした。

こういったことからも、「見た目」や「味の濃さ」を子どもが好きな感覚に近けて、ここから食べられるものを広げていくということを考えていきました。

口から出すことに対しては「これは子どもの好きな感覚ではなかったんだな、ヒントが得られたな」等と楽観的に捉えることも、長い指導において大切な点かと思います。

牛乳を飲めるようになるために

そして本題の牛乳に関しては、長い時間をかけて、少しずつ牛乳に対してカルピスの量を減らしていきました。

具体的には、1学期の頃は牛乳とカルピスは50%ずつでした。それを2学期に入ってから、牛乳の割合を全体に対して約1ヶ月ごとに5%ほどずつ増やしていきました。

牛乳が飲めるようになるまでの牛乳とカルピスの割合の増減について

牛乳85%、カルピス15%ほどで飲めるようになった時に「もう100%の牛乳が飲めるのではないか?」と感じたようで、試してみたところそれは失敗してしまったようです。そこからは改めて、スモールステップを意識し、少しずつ、少しずつ、牛乳を100%に近づけていきました。

食べられるものを広げていく際のステップアップは、慎重であればあるほど良いと考えましょう。その際に私はよく「階段ではなく、スロープをイメージしてください」と言います。少しずつの方が功を奏すのです。

また、今まではカルピスと混ぜるために見せないよう隠していた「牛乳パックからコップに注ぐ様子」を、お子さんに見せてから飲んでもらうことを実践していきました。

具体的には、最初は①子どものコップには今まで通りカルピスと牛乳を混ぜたものを入れておく②先生自身のコップは空にしておき牛乳パックからコップに注ぐ様子を繰り返し見せるということをして「牛乳パックとコップに入っている牛乳は、同じものなんだよ」ということを目で見て覚えてもらうようにしました。それを数日続けたところ、子どもが自分から牛乳を先生や自分のコップに注ぐようになったと言います。

それらを続けてもらい、また少し経った後、ついに100%の牛乳に自分から口をつけました。その際に頂いたメッセージも紹介いたします。

これまで100%の牛乳はほぼ口を付けることはなく、自分でコップに注いで揺らして遊ぶくらいのことはありました。しかし、今日は100%の牛乳も口を付けてくれました!「飲めたね!知ってる味だったね!いつも飲んでる牛乳と同じだよ〜大丈夫だよ」と伝えるともう一口!3回くらい口に付けてくれました。すごいです!!これが「飲めるって覚える」ってことかー!少しずつ口にする量が増えていってくれたらいいなと思います。焦らず、一歩一歩、ですね。

牛乳以外のところでは、これまで決まったお店やメーカーしか食べなかったラーメンを、給食のものでも食べられるようになったり、汁物を口にしている様子を初めて見ることができたり、今までは食べなかったおからドーナツを食べたり、フレークではない鮭を食べられるようになったり、総じて自分から食べようとすることが増えてきたとのことです。

最後のまとめ。牛乳が飲めない様々な理由と対応

今回、牛乳が飲めないという事例の支援について紹介させていただきました。

今回のように「カルピス」を使う方法ではなくても、ミルクティー、飲むヨーグルト、ココアなどの、牛乳が含まれている乳製品は、牛乳が飲めるようになるためにキーアイテムとなり得る事があります。ポイントは苦手なものを苦手なまま挑戦させずに、その子が好きなものからだんだん100%の牛乳に近づけていくことです。

一番やってはいけないのは「好き嫌いしないで牛乳を飲みなさい!」という根性論になってしまう事です。また、今回は「見た目へのこだわり」や「味覚鈍麻傾向」が理由で、牛乳などが飲めないというケースでしたが、牛乳に関しては「飲むことで気持ち悪くなってしまう」や「飲むと体調を崩しやすい」などのケースもあります。子どもに無理をさせる必要はありませんので、周りの大人が理解をするように努めましょう。

本記事で紹介させていただいた先生の試行錯誤・懸命なサポートが、食の進みに繋がっていったことは言うまでもありません。その先生がおっしゃっていたことで、印象的だったことも最後に紹介いたします。

給食指導は関わる人が増えれば増えるほど、そこの共通理解がとても大事だなと思います。山口さんが教えてくださるような食に対する考え方、対応が出来る人はまだまだ少数で、山口さんから「これはやらない方がいいですよ」と教えてくれた方法で、やってしまっている場面が大半な気がします。私は縁あって山口さんと繋がることができたので、学ばせてもらっていることを、これから少しずつでも広げて行けたらなと思っています。

今後も、より良い給食の指導方法をどんどん広げていくために「きゅうけん」は活動していきます。本記事なども、ぜひぜひ色々なところで紹介していただければ幸いです。

こちらの記事が参考になった方は「【図解】先生でも分かる会食恐怖症」もオススメです。

また、初めてきゅうけんに訪れた方は「はじめましての方へ」もご覧いただくと、調査に基づいた給食指導の現状などもより理解することができます。

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本記事の担当編集者
山口 健太

『月刊給食指導研修資料|きゅうけん』 編集長
株式会社日本教育資料 代表取締役
一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会 代表理事

岩手県盛岡市出身。学生時に「会食恐怖症」を発症し、他人と食事ができなくなった経験を持つ。その中で「食べられない」ことへの適切な対応や支援が、子どもたちと関わる教育者に広まっていないことを痛感。メディア「月刊給食指導研修資料|きゅうけん」を立ち上げ「楽しく食べることが、社会の幸せを作る」という思いで活動している。著書に『食べない子が変わる魔法の言葉』(辰巳出版)ほか数冊。

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