完食ご褒美シールがプレッシャーになっていませんか?【2021年3月】

【イラスト付き資料】完食ご褒美シールがプレッシャーになっていませんかのサムネイルです 月刊イラスト付き資料

毎月、先生のための給食指導に関する情報を、分かりやすく1枚の資料にまとめ、文章でも詳しくお届けします。

資料はご自由に印刷していただいて構いません。クラス担任を持つ先生に配布する資料としてご活用できます。また、職員室内や職員会議にて、全職員に回覧していただくことで、業務改善にもつながります。(資料のダウンロードリンクは記事目次のすぐ下にあります。)

今月は「完食ご褒美シールがプレッシャーになっていませんか?」をテーマにしてお届けします。

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「完食ご褒美シール」を使った給食指導とは?

きゅうけん資料ー完食ご褒美シールがプレッシャーになっていませんか

※「完食ご褒美シールがプレッシャーになっていませんか?」の印刷用PDFはこちら(右クリックで保存できます)

「完食ご褒美シール」を使った指導とは、給食を完食するとそのご褒美として、シールやスタンプが貰えるという取り組みです。

とある小学生の先生向けの調査によると「こういった指導をいつも行なっている」と回答した先生は5%以上にのぼります*1。

また、いつも行っているわけではなくても、一時的に完食率をあげるための取り組みとして、期間限定でこういった指導を行うケースもあります。ですから、その場合も考えると、先に挙げた5%よりもさらに多くの場合に実施されているだろうと考えられます。

また、クラス単位ではなく、学年や、園・学校全体で行われるというケースも見られますし、実際に行われている形はさまざまです。

それは例えば、

  • 「完食できた個人に対してシールをあげる」
  • 「班のみんなが完食したらシールをあげる」
  • 「クラス全員で完食したらシールをあげる」

など、様々なパターンがあります。また「給食カード」のようなものを作って、そのカードにシールやスタンプ、あるいは印をつけるなどのやり方もあります。

完食ご褒美シールの給食指導のイラスト

果たして、この指導方法は良いものなのでしょうか?メリットとデメリットを考えてみましょう。

本指導のメリットとデメリット

この取り組みのメリットとしては「今日は完食をしてみよう!」とか、「苦手なものでも少し口をつけてみようかな」等と、食べる意欲が上がるということが考えられます。

特に「言葉で褒める」などに比べて、成果を可視化することによって、自分自身でも成長などを感じやすいのもポイントの1つです。

実際にシールなどを活用した取り組みをしたことがある、現役男性保育士さんの声を以下より紹介させていただきます。

給食だけに限らずですが、何か成長してほしい事に対してカードを作って、そこにご褒美のシールを貼るなどの取り組みは、子どもの成長につながると感じることがあります。しかし、ただただシールを使えば良いのではなくて、その際に大切なのは「目標を子ども自身が決めること」や「小さなステップを大切にすること」だと僕は考えています。また、何事も成長のためには「自発性」が大切だと思います。そのためには「楽しい!」や「嬉しい!」と感じてもらえる仕組みがあると良いと思います。その点シールなどを使うことで、子ども自身も「できた!」と実感しやすいです。そういったことから「楽しい!」とか「成長の喜び」を作り出すわかりやすいツールとして、シールなどは有効に働くことがあると思います。(20代・男性・保育士)

一方デメリットとしては、それがプレッシャーとなり、逆に食べる意欲が下がるということも考えられます。

特に「クラス全員が」、「班のみんなが」という連帯での責任が生じる場合、注意が必要です。偏食、小食、精神的な問題などで食べられない子にとっては、大きなプレッシャーが生じる可能性があります。
給食を食べられないで責められる子のイラスト

大きなプレッシャーを感じてしまうと、不安が大きくなり食べる意欲が下がるだけではなく、咀嚼や嚥下の筋肉の動きが低下し、消化器官の働きが低下するなどのことも起こり得ます。また、連帯責任が生じると、周りのお友達から「食べろよ!」と圧をかけられる可能性があります。それが場合によっては「いじめ」に繋がったり、「給食が嫌だから学校に行きたくない…」など、不登校のきっかけになったりするケースもありますので注意が必要です。

こちらに関しては以下より、被体験者の方の声も紹介させていただきます。

3.4年生のクラスでご褒美シールがありました。しかも、班全員が食べ終わったら班で1枚シールがもらえる連帯責任スタイルでした。他にも、どの班が1番掃除がキレイにできたかとか、授業で発表した人が多かったかとか、色々な競走の中の1つに完食ご褒美がありました。とある日には「酢豚&ワカメスープ」という1番苦手な組み合わせのメニューがあり、献立表をもらった時から吐き気と腹痛がひどかったのを覚えています。しかも、半月に1度出るメニューだったので、前々からその日は食べられるかを心配していた気がします。「食べられない=ご褒美シールがもらえない=班の人に迷惑がかかる」という考えから、その組み合わせのメニューの日は給食のためだけに学校を休んだこともありますし、午前中で早退したこともありました。(30代・女性)

指導を行う際のポイントや注意点まとめ

ここまでを踏まえた上で、イラスト付きの資料では本指導におけるポイントや注意を5つにまとめました。

  • 完食を1番の目的にするのではなく、あくまで食べる事と楽しさを結びつけることを目的とする。
  • 「苦手なものに口をつけられたらシール」など、周りと比べずに個人の苦手や成長に配慮して取り組むようにする。
  • 過度なプレッシャー、いじめのきっかけにならないように注意をする。
  • 仮に取り組む場合は、原則個人単位(連帯責任にならない形)で実施をする。
  • 子どもが好きなキャラクターのシールにすると食べる意欲がアップすることもあります。

それに加えて、目標は先生側が一方的に決めるのではなく、しっかりとコミュニケーションをとった上で、子ども自身が決めた形にすることなども大切でしょう。

「食べる」ということに関しては、見て覚える→匂いを嗅ぐ→触ってみる→ちょっと齧(かじ)る→食べてみる…というような小さいステップがあります。苦手なものをいきなり食べることは難しいので、小さなステップを大切にしていきましょう。

「食べられない」は、子どもの感情的な問題やわがままなどではありません。必ず理由があり、それに応じた適切な対応が必要となります。ですから、指導する立場にある大人は、まずそれを理解することが大切です。

来月のきゅうけんでは、そういった内容を主題として食べられない子のさまざまな理由と適切な対応について取り上げる予定です。

参考文献:
*1福岡景奈,赤松利恵,新保みさ,小学校における学級担任による給食指導:―栄養教諭・学校栄養職員と相談している教員の特徴―.2017

また、初めてきゅうけんに訪れた方は「はじめましての方へ」もご覧いただくと、調査に基づいた給食指導の現状などもより理解することができます。

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本記事の担当編集者
山口 健太

『月刊給食指導研修資料|きゅうけん』 編集長
株式会社日本教育資料 代表取締役
一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会 代表理事

岩手県盛岡市出身。学生時に「会食恐怖症」を発症し、他人と食事ができなくなった経験を持つ。その中で「食べられない」ことへの適切な対応や支援が、子どもたちと関わる教育者に広まっていないことを痛感。メディア「月刊給食指導研修資料|きゅうけん」を立ち上げ「楽しく食べることが、社会の幸せを作る」という思いで活動している。著書に『食べない子が変わる魔法の言葉』(辰巳出版)ほか数冊。

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