毎月、先生のための給食指導に関する情報を、分かりやすく1枚の資料にまとめ、文章でも詳しくお届けします。
資料はご自由に印刷していただいて構いません。クラス担任を持つ先生に配布する資料としてご活用できます。また、職員室内や職員会議にて、全職員に回覧していただくことで、業務改善にもつながります。(資料のダウンロードリンクは記事目次のすぐ下にあります。)
今月は「完食ご褒美シールがプレッシャーになっていませんか?」をテーマにしてお届けします。
「完食ご褒美シール」を使った給食指導とは?
※「完食ご褒美シールがプレッシャーになっていませんか?」の印刷用PDFはこちら(右クリックで保存できます)
「完食ご褒美シール」を使った指導とは、給食を完食するとそのご褒美として、シールやスタンプが貰えるという取り組みです。
とある小学生の先生向けの調査によると「こういった指導をいつも行なっている」と回答した先生は5%以上にのぼります*1。
また、クラス単位ではなく、学年や、園・学校全体で行われるというケースも見られますし、実際に行われている形はさまざまです。
それは例えば、
- 「完食できた個人に対してシールをあげる」
- 「班のみんなが完食したらシールをあげる」
- 「クラス全員で完食したらシールをあげる」
など、様々なパターンがあります。また「給食カード」のようなものを作って、そのカードにシールやスタンプ、あるいは印をつけるなどのやり方もあります。
果たして、この指導方法は良いものなのでしょうか?メリットとデメリットを考えてみましょう。
本指導のメリットとデメリット
この取り組みのメリットとしては「今日は完食をしてみよう!」とか、「苦手なものでも少し口をつけてみようかな」等と、食べる意欲が上がるということが考えられます。
特に「言葉で褒める」などに比べて、成果を可視化することによって、自分自身でも成長などを感じやすいのもポイントの1つです。
実際にシールなどを活用した取り組みをしたことがある、現役男性保育士さんの声を以下より紹介させていただきます。
給食だけに限らずですが、何か成長してほしい事に対してカードを作って、そこにご褒美のシールを貼るなどの取り組みは、子どもの成長につながると感じることがあります。しかし、ただただシールを使えば良いのではなくて、その際に大切なのは「目標を子ども自身が決めること」や「小さなステップを大切にすること」だと僕は考えています。また、何事も成長のためには「自発性」が大切だと思います。そのためには「楽しい!」や「嬉しい!」と感じてもらえる仕組みがあると良いと思います。その点シールなどを使うことで、子ども自身も「できた!」と実感しやすいです。そういったことから「楽しい!」とか「成長の喜び」を作り出すわかりやすいツールとして、シールなどは有効に働くことがあると思います。(20代・男性・保育士)
一方デメリットとしては、それがプレッシャーとなり、逆に食べる意欲が下がるということも考えられます。
特に「クラス全員が」、「班のみんなが」という連帯での責任が生じる場合、注意が必要です。偏食、小食、精神的な問題などで食べられない子にとっては、大きなプレッシャーが生じる可能性があります。
こちらに関しては以下より、被体験者の方の声も紹介させていただきます。
指導を行う際のポイントや注意点まとめ
ここまでを踏まえた上で、イラスト付きの資料では本指導におけるポイントや注意を5つにまとめました。
- 完食を1番の目的にするのではなく、あくまで食べる事と楽しさを結びつけることを目的とする。
- 「苦手なものに口をつけられたらシール」など、周りと比べずに個人の苦手や成長に配慮して取り組むようにする。
- 過度なプレッシャー、いじめのきっかけにならないように注意をする。
- 仮に取り組む場合は、原則個人単位(連帯責任にならない形)で実施をする。
- 子どもが好きなキャラクターのシールにすると食べる意欲がアップすることもあります。
それに加えて、目標は先生側が一方的に決めるのではなく、しっかりとコミュニケーションをとった上で、子ども自身が決めた形にすることなども大切でしょう。
「食べられない」は、子どもの感情的な問題やわがままなどではありません。必ず理由があり、それに応じた適切な対応が必要となります。ですから、指導する立場にある大人は、まずそれを理解することが大切です。
来月のきゅうけんでは、そういった内容を主題として「食べられない子のさまざまな理由と適切な対応」について取り上げる予定です。
*1福岡景奈,赤松利恵,新保みさ,小学校における学級担任による給食指導:―栄養教諭・学校栄養職員と相談している教員の特徴―.2017
また、初めてきゅうけんに訪れた方は「はじめましての方へ」もご覧いただくと、調査に基づいた給食指導の現状などもより理解することができます。
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