毎月、先生のための給食指導に関する情報を、分かりやすく1枚の資料にまとめ、文章でも詳しくお届けします。
資料はご自由に印刷していただいて構いません。新学期の給食が始まる際などに、クラス担任を持つ先生に配布する資料としてご活用できます。また、職員室内や職員会議にて、全職員に回覧していただくことで、業務改善にもつながります。(資料のダウンロードリンクは記事目次のすぐ下にあります。)
今月は「子どもが食べられない3つの理由」をテーマにしてお届けします。
子どもが食べられない3つの理由とは?
※「子どもが食べられない3つの理由」の印刷用PDFはこちら(右クリックで保存できます)
今回の資料では子どもが食べられない理由について、シンプルに分かりやすく以下の3つに分けてお伝えしています。
感覚的な理由
食べることに関わる感覚器官(五感)が、過敏である(過剰に感じやすい)ことや、鈍麻である(感じにくい)ことにより、感覚的に受け付けられないことがあります。そのため、味や食感の刺激を強く感じやすい・感じにくいなどの理由から、食べられないものが多くなることがあります。
具体例
- 見た目へのこだわりが強く、形状や色が変わると同じ食材でも食べない。
- サクサクした食感が痛く感じる、もっちりしたものが気持ち悪く感じる。
- スープなどザラザラと舌に残る感じが苦手で受け付けられない。
機能的な理由
咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)に関わる口腔機能が未発達であることにより、食材をうまく噛めない・うまく飲み込めないという理由で、食べられないものが多くなることがあります。
具体例
- お肉、キノコ、繊維のある野菜などを歯でうまくすりつぶせない。
- 細かく刻んだものや、口の中でバラバラになるものが苦手。
- 魚やパンなどがパサパサしていて食べ辛く感じる。
精神的な理由
過去に食べることで嫌な体験をしたことや、環境やタイミングによってプレッシャーや不安が強いと、食欲が湧かずに食べられないことがあります。
具体例
- 喉に詰まらせることや、気持ち悪くなるのが怖くて不安。
- 残さず食べなければいけないことがプレッシャーに。
- そもそも、食べることが嫌いになってしまっている。
また、以前「【図解】先生でもわかる会食恐怖症」でも取り上げた「会食恐怖症」なども、精神的に食べられないことで起きているものです。
その他の食べられない理由は?
イラスト付きの資料では、大きく分けて上記3つの理由をお伝えしました。
それ以外でも、例えば元々あまり量を食べられないタイプの子もいます。また、同じクラスの中に4月生まれの子もいれば、3月生まれの子などもいてそこには約1年の差があります。それだけ成育が違えば、食べられる量に差が出るのも当然です。
さらに、給食の場合では、基本的に献立は統一されています。
つまり、小学校1年生の子と、小学校6年生の子は基本的に同じ献立の食事をすることになります。そうすると、子どもですから、タイミグによっては乳歯が抜けている中で食事をすることになります。たとえば、奥歯が抜けてしまっていて生え変わるタイミングで、お肉などを噛んだり(すり潰したり)することは機能的に難しいです。
このように、精神的(気分的)なタイミングだけではなく、口腔機能にも日々変化がありますので、食べられないものを無理に食べさせることは危険です。
それぞれの指導方法の例
「食べられない」が「食べられる」に変わっていくためには、どのような指導が必要になるのでしょうか?
まずは「食べられない理由があるのだ」と認識することです。ここで「わがままだから食べない」と捉えてしまうと、適切な指導は大変難しくなってしまいます。
そして共通点としては、「食べることが楽しい」という前提の上で、無理をさせずに、スモールステップで、食の進みをサポートすることです。
その上で、
- 感覚的な理由の場合→好きな感覚から徐々に食べられる範囲を広げていく
- 機能的な理由の場合→口腔機能を少しずつ獲得していけるようにサポート
- 精神的な理由の場合→食べられなくても大丈夫という安心感を育む
というところが大切なポイントになります。
まとめと給食指導において大切なこと
先生として「残食を出さないようにしなければいけない」という気持ちや「苦手なものに少しでも挑戦してほしい」という気持ちや、日々の忙しさなどから、食べられない子に対して、つい、強い口調で無理強いしてしまうこともあると思います。
しかし、それは上記のような理由があり、食べられない子にとっては逆効果です。
まずは食べられない理由を知ろうとするところから始めて、無理に食べさせようとしない事が子どもの安心感につながり、少しずつ食べられるものも増えていきます。
もし、指導に迷いが生じたら「苦手なものはあったとしても、明日も給食を食べたいな」と、思ってもらえるような関わり方を意識してみましょう。
そして何よりも「食べることは楽しい」という土台があるからこそ、食べられるものは広がっていきます。また、家庭で出来ることに比べて、給食時間で出来ることは限られていますから、子どもの成長を信頼し、長い目で見てあげた上で「食べられないことを叱る」よりも「少しでも食べられたことを褒める」ようにしてみましょう。
そうすれば、子どもにとっても先生にとっても、楽しい給食の時間になるはずです。
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