毎月、先生のための給食指導に関する情報を、分かりやすく1枚の資料にまとめ、文章でも詳しくお届けします。
資料はご自由に印刷していただいて構いません。小中学校・保育所での給食指導、クラス担任を持つ先生へ配布する資料としてご活用できます。職員室内・職員会議にて、全職員に回覧していただくことで、組織全体の業務改善・トラブル回避にもつながります。(資料のダウンロードリンクは記事目次のすぐ下にあります。)
今月は「低年齢(0歳・1歳・2歳)の子」に焦点を当てた内容です。給食指導のポイントや食べない時に確認したいこと・考えたいことなどを分かりやすくまとめていきます。
●その他、本テーマに関連する解説記事はこちら
▶︎【図解】どうする?食べるのが遅い子ども(保育園児・小学生向け)
▶︎【図解】子どもが給食を食べられない3つの理由【2021年4月】
低年齢の子ほど特に注意?
※『0・1・2歳は特に大切!低年齢の子に気をつけたいこと』のPDFはこちら(右クリックで保存できます)
2020年2月とある大阪の保育園で1歳2ヶ月の男児が給食を喉に詰まらせ死亡してしまったという悲しい事故がありました。報告書によるとその背景に「長年にわたり、好き嫌いをせず、時間内に全量食べきることが定着し、子ども一人一人のペース等への配慮よりも優先されていた」とのことです。
大阪市城東区の認可保育園で1歳2カ月の男児が給食をのどに詰まらせて死亡した事故について、市の有識者会議は14日、検証報告書を取りまとめた。給食を時間内に残さず食べさせるという「暗黙のルール」があったことが事故につながったと結論づけ、再発防止に向けて「子ども一人ひとりの発達に応じた適切な食事援助」を行うよう求めた。事故は昨年2月12日昼の給食時に起きた。報告書によると、男児がリンゴを食べるのを嫌がっていたため、保育士が何とか食べさせようとリンゴとハンバーグを一緒に口に入れたところ、男児が泣き始めて体をのけぞらせたため、食べ物がのどに詰まったという。また、「長年にわたり、好き嫌いをせず、時間内に全量食べきることが定着し、(子ども)一人一人のペース等への配慮よりも優先されていた」ことが事故の背景にあったと判断。男児の食事を援助していた保育士についても「飲み込む前に次の食べ物を詰め込んだ状況があったと推察される」とした。報告書では再発防止策として、子どもの発達に応じた保育のほか、マニュアルの作成・見直しや定期的な訓練実施などによる職員の危機管理意識の向上などを挙げた。(笹川翔平)(引用元:園児死亡事故、「給食時間内に食べさせる」暗黙ルール.2021-01-16,朝日新聞デジタル*1)
完食を目指す指導の全てが悪いわけではありませんが、事故やトラブルを引き起こしてしまうことは絶対に避けなければなりません。また、目立った事故が起きなかったとしても、それで子どもが食べることが嫌いになってしまえば、どんどん食べられなくなってしまいます。
そもそも、全て食べきるために必要なのは「残さず食べよう!」という呼びかけではなく、適切な子どもの食に関する知識を元にした個別対応(子ども一人一人に応じた適切な対応)」ですので、尚更、情報共有の機会が大切になるでしょう。
その中で特に「0歳・1歳・2歳」は大人主導で食事を進めてしまいやすいタイミングなので、より注意が必要です。
0・1・2歳は食べる発展途上!
なぜより注意が必要かというと、低年齢の子ほど食べることに必要な口腔機能も獲得の途中であり、言葉もまだこれからの時期ですので、コミュニケーション不足にも陥りやすいからです。
また、人間は2歳前後に味覚の感じ方が変わります。味覚が発達し、より強く味を感じるようになりますので、そのタイミングでこれまでは食べていたものを食べなくなることがあるなど、偏食がより目立つ時期でもあることも知っておきたいですね。*2
この時期に焦って無理に食べさせてしまうと、将来的な食の広がりを妨げてしまいます。
食べない時に確認したいこと
これまで「きゅうけん」では、食べられない理由について3つの観点からお伝えしてきました。
0・1・2歳など低年齢の子で給食が食べない時によくあるのは「機能的な理由」によって食べられないということです。
食べる動作をいくつか分けると
- 食べ物を目で見て確認する
- 口へ取り込み
- 前歯で噛みちぎり
- 舌を使って奥歯に食べ物を移動
- 奥歯で食べ物をすりつぶし
- 舌を使って喉元へ送り込み
- 嚥下をする(飲み込む)
というような流れになりますが、それまでに様々な感覚器官や口腔機能を使っていることが分かると思います。
ですから、例えば「唇を閉じる動きができない」、「舌を上下左右前後に動かせない」、「奥歯を使ってすりつぶせない」などがあれば、食べられなかったり、時間がかかったりするのは当然なのです。
これでは、3キロのダンベルを持てない人に、10キロのダンベルを持たせようと頑張っているようなものです。そもそも無謀なことをさせていることがわかりますね。
こういった場合には、いま食べられる形態のものとその一歩先の食事を用意しながら、口腔機能の獲得をサポートすることが大切です。
口腔機能の獲得に関しては、歯科医師や言語聴覚士などの専門家からサポートを受けることも必要になることがありますので、困難な場合には覚えておくと良いでしょう。
またこちらに関しては、また別の角度で大切なことをお伝えしている「子どもが食事をベーっと吐き出したらどうする?」の記事も一度読んでいただくことをオススメします。
給食では子どもの様子をしっかりと観察しよう
その他の基本的なこととして「子どもの意思確認なしに食べ物を口に運ぶ」なども注意しましょう。
力もなく言葉でも上手に伝えられない小さい子ほど、大人のやり方を一方的に受け入れるしかなくなってしまいます。だからこそ大人もよく子どもの食べる様子を観察する必要があります。
毎日の忙しい中で、少しでも意識して取り組みたいこととして覚えておいてください。
最後に
今月号はいかがでしたか?
今回の要点は、
- 小さい子ほど大人の関わり方が大切
- 2歳前後は生理的に好き嫌いが多くなる時期
- この時期に多いのは「機能的な理由」で食べられないこと
- 子どもの様子を確認して食事を勧めよう
というところになると思います。
保育園での給食指導でぜひ参考にし、職員同士共有をしてみてください。
今月も保育園の先生のリクエストから記事を制作しましたが、きゅうけん、読者さんの声を大切にしておりますので「こういった内容について取り上げて欲しい」などがありましたら、これからも「きゅうけんマガジン」などからぜひぜひお声をお寄せください!
参考:
*1 園児死亡事故、「給食時間内に食べさせる」暗黙ルール.2021-01-16,朝日新聞デジタル
*2 mog株式会社.「子どもの食事」に関する調査.2020.
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