毎月、先生のための給食指導に関する情報を、分かりやすく1枚のイラスト付きの図解資料にまとめ、文章でも詳しくお届けします。
資料はご自由に印刷していただいて構いません。小中学校・保育所での給食指導、クラス担任を持つ先生へ配布する資料としてご活用できます。職員室内・職員会議にて、全職員に回覧していただくことで、組織全体の業務改善・トラブル回避にもつながります。(資料のダウンロードリンクは記事目次のすぐ下にあります。)
今月は「先生45人に聞いた!給食指導の工夫とコツ&悩みや失敗エピソード」というテーマで、先生向けの給食指導の独自調査などを元にお伝えしていきます。
調査結果だけではなく、その中で見えてきた指導のつまづき点や突破口についても、本解説記事ではお伝えしていきますので、ぜひ読んでみてください。
- 給食指導で1番苦労していることの1位「好き嫌い・偏食の子への指導」、2位「価値観や方針との相違」。
- 給食指導において”失敗談”持っている先生は半数以上。エピソードも紹介。
- 「無理して食べなくてもいい」だけでは偏食は改善しない。大切なのは「少しずつ食べられる範囲を広げる」ための工夫。
- 自分なりの工夫やコツを持っている先生の指導ノウハウも紹介。
●その他、本テーマに関連する解説記事はこちら
▶︎【図解】クラスに約4人も?給食が「かなり苦手」な子どもの心境
先生45人を対象に給食指導の悩みや工夫について調査
※『先生が給食指導で抱えている悩みとは?』のPDFはこちら(右クリックで保存できます)
先日、弊社が運営している「きゅうけんマガジン」内で、先生に向けた給食指導に関するアンケート調査を行いましたが、先生それぞれがさまざまな悩みや失敗談を持っていることが分かりました。
その中で回答いただいた内容と見えてきたことを今回はまとめていきます。給食指導を日々行っている、現役の先生がどのようなことに悩んでいるのか、そしてどんな工夫をしているのかなどを、ぜひ知っていただければ幸いです。
調査結果まとめ1.「給食指導において苦労している点」
「給食指導において苦労している点について、以下に当てはまるもの全てを教えてください(複数回答可)」という設問に対しての回答では、上位3つの回答が、
- 好き嫌いが多い、偏食の子どもに対する指導…77.8%
- 小食な子に対する指導…44.4%
- 給食指導に対する園や学校の方針、または他の先生と意見が合わない事…40.0%
一方、「給食指導で1番苦労していることは何ですか?(1つ選択)」という設問に対しての回答では、
- 好き嫌いが多い、偏食の子どもに対する指導…42.2%
- 給食指導に対する園や学校の方針、または他の先生と意見が合わない事…33.3%
- 食べるペースが遅い子への指導…8.9%
と、給食指導においては「好き嫌いが多い・偏食の子どもに対する指導」が根強く苦労している点として挙げられること。そして1番の悩みとして「園や学校の方針、周りの先生と意見が合わないこと」を挙げる先生が多いことから、指導方針や価値観の違いが強いストレスになっていることが推測されます。
調査結果まとめ2.「給食指導における失敗談」
また、今回は任意回答での「これまで給食指導の場面での失敗談があれば教えてください」という設問に対しては、以下のような回答としてありました。
●ご自身の指導についての失敗エピソードに類する回答
- 周りに比べて、食べる量が少ない、スピードが遅いことで、促したり急かしたりしてしまった
- 体のために残さないで、という声かけをしていたこと。
- 食べたくないと言っているのに「この前食べられたから今日も美味しいかもよ?」と推し過ぎました。それからしばらく「絶対食べない!」と頑なになってしまい、前回食べたからと今回もと期待しすぎ、失敗しました。
- 子どもが『お腹痛い』と言った時に、嫌いで食べたくないんだと思って『大丈夫。お野菜食べたらお腹痛いのも治るよ。』と言って食べさせたら、翌日に、本当に体調不良で保育園をお休みした。
- 大規模園にいたときに、自分に、自信と余裕がもてず、無理な給食指導をしてしまった時です。はっきりと自分の意見をのべて、他職員への周知と、子どもに寄り添った指導ができていればと今でも悔やんでます
●周りの先生との関わりについての回答
- 指導観が全く合わない教師指導法を目の当たりにした時、平行線のまま泣いても無理矢理食べさせる児童を守れなかった
- 乳児クラスで嫌いなものを頑張る基準が先生と違い頑張ってひと口食べたので頑張って食べたねと嫌いなものを避けておいたら後からクラスの先生が食べさせていた。
- 担任の行きすぎた給食指導を黙ってみているしかできなかった
●子どものペースを尊重しすぎて、食べなくなってしまったという類の回答
- 子どもの様子に合わせて無理なく進めていたところ、偏食が減らなかったが、他の先生に変わった途端食べるようになった。
- 無理だったら残して良いよ、と声掛けしたらそれ以降食べられる物も無理と言われるようになった。
※詳しくは調査レポート株式会社日本教育資料.「給食指導について」調査報告.2022にいただいた回答を全て載せていますので、気になる方はご一読ください。
調査結果まとめ3.「給食指導における工夫やコツ」
さらに、任意回答での「給食指導において、自分なりのコツや工夫していることがあれば教えてください。」という設問に対しては、以下のような回答としてありました。
●無理強いをしないということに関する回答
- 楽しい時間になるように、まずは本人の気持ちに寄り添い、無理なくすすめる。
- 無理強いはしない。進級・就学をゴールと捉えず、今その子のできる範囲で無理なく食べられるよう心がけた
- ある程度の好き嫌いは許容する。無理強いはしない。残すのは悪いことではない。教室を回るときは笑顔で、美味しいね、楽しいねという雰囲気づくりをする。集団での指導と個別の指導を組み合わせるといった事を心がけています。ただ、ふざけていて食べ物を粗末にしたり、無駄にしたりする時は真面目に話をします。
- 無理に食べさせない。自分もおいしく食べる。楽しい雰囲気になるよう心がける。
●スモールステップやその子に応じた対応をするようにしているということに関する回答
- 食べるのが苦手な子にはあえて少量にし、食べられた達成感やお代わりをした喜びを感じられる様にしている。
- すぐに満腹を感じ、食事が進まなくなってしまうため、お腹が空いている状態の時に苦手な食材にチャレンジさせてみる。個々の進み具合を見ながら、大きさや柔らかさを調整する。食べ方の練習も大切にしながら、ある程度は手を出し、いろいろな食材にふれてもらい一口でも多く食べてもらえるようにする。
- 保護者に家での食事の様子。食材の切り方や味など細かく聞き、近づける。
- 子ども自身に食べる量を決めてもらう→一口でも食べたら喜びその様子を保護者にも伝えていく。
- 食べる子が遅い子、偏食がある子などに対して「においだけでもいいよ」「食べられるところまでで大丈夫だよ」など子供が、食べることに苦痛に感じないよう、温かい言葉かけを意識して対応している。
- 食べる食べないを子どもがどれだけ小さくても選択できるようにしている。また、一口までいかなくても触るや臭う、口に触れるなど食べないの一言で終わらせないようにはしている。
●子どもとの関わりを大切にするということに関する回答
- 子ども達とのつながり、人間関係作りが第1と考えている。とにかく信頼関係を上手く構築すること。
- まずは仲良くなることから。給食側の人間なので、苦手と言いづらそうな子供たちが多い。苦手なものを伝えてもらいやすい関係作り。
※詳しくは調査レポート株式会社日本教育資料.「給食指導について」調査報告.2022にいただいた回答を全て載せていますので、気になる方はご一読ください。
偏食改善に向けた指導で大切なこととは?
今回の調査で気になった点としては、失敗談として「子どものペースを尊重しすぎて、食べなくなってしまった」という類の回答が挙がる場合もあれば、日々の工夫やコツとして「無理強いをしないこと(子どものペースを尊重すること)」を挙げている場合もあったということです。それも踏まえた上で「偏食の改善と無理強いをしないこと」について、ここで少しお伝えしていきたいと思います。
きゅうけんでも「食べられない子に無理をさせてはいけない」という話をしています。ただこれは「無理をさせない→偏食が改善する」というわけではありません。
偏食を改善するには、なるべく簡単に書くと、
- 食べることが楽しいという土台を作るために、まずは食べることへの苦痛を取り除いていく
- 食べられない理由を分析・考察し、理由に合った対応を考える
- 今食べられるもの、好んで食べるものをベースに、少しずつ食べられる範囲を広げていく
ということが必要です。「無理をさせない」というのは(1)の苦痛を取り除くためには貢献しますが、だからといって、これだけで偏食が改善するわけではありません。
これは、違うことに置き換えてみれば、簡単に分かると思います。たとえば、体育やスポートの場面で、「走ることが苦手な子」がいたとします。走ることが苦手な子に「無理して走らなくていいよ!」という声かけをしたとしても、走るのが上手になるかというと、そういうわけではないですよね。でもだからといって、”走るスパルタトレーニング”を行なったとしても、きっと心が折れたりとか、怪我をしてしまったりして、これまた上手くいかないでしょう。
ですからまずは「どうして走るのが苦手なのか」という理由を考えるはずです。そうすると例えば、
- 走るフォームが悪い
- 筋肉量が足りていない
- 走るのが遅くて周りと比べられるのが嫌
- 自分では頑張っているつもりなのに「ちゃんと走れ!」と言われるから嫌
- 靴やウェアが合っていない
など、何かしらの理由があるはずです。そして、その理由に合った対応をしたり、その子の段階に合わせて、スモールステップでトレーニングを考えて、少しずつ走ることが得意になるようにサポートをしていくはずです。これを考えると「無理して食べなくてもいいよ」とか「無理して走らなくていいよ」とかそういう声かけをするから、偏食や走りが改善するわけではないことが分かります。無理をさせないことの声かけは、あくまで土台づくりということなのです。
最後に
今回の記事はいかがでしたか?
調査から「好き嫌い・偏食の子どもに対する指導」に関しては多くの方が悩んでいることが分かり「園や学校の方針、周りの先生と意見が合わないこと」を1番の悩みとして挙げる先生が多いことからも、そういった情報共有の時間や機会を増やすことが大切だと言えるでしょう。
「偏食に対してどうすれば良いのか」に関することで、個に応じた指導や支援の方法については「【図解】子どもが給食を食べられない3つの理由」、「【図解】食べない子になんて声をかけたらいい?」なども一度読んでおくことをお勧めします。
きゅうけんは読者さんの声や要望を大切にしております。「こういった内容について取り上げて欲しい!」などのリクエストがありましたら、これからも「きゅうけんマガジン」などからぜひぜひお声をお寄せください!
参考文献:株式会社日本教育資料.「給食指導について」調査報告.2022
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