幼稚園・保育園でも給食の居残りはしてはいけない?【2021年7月】

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毎月、先生のための給食指導に関する情報を、分かりやすく1枚の資料にまとめ、文章でも詳しくお届けします。

資料はご自由に印刷していただいて構いません。小中学校・保育所での給食指導、クラス担任を持つ先生へ配布する資料としてご活用できます。また、新任の先生や職員室内・職員会議にて、全職員に回覧していただくことで、組織全体の業務改善・トラブル回避にもつながります。(資料のダウンロードリンクは記事目次のすぐ下にあります。)

今月は、特に保育士さんからの相談が多かった内容「給食を食べない子や食べるのが遅い子の”ごちそうさま”はいつがベストなのか?」、「居残り給食はしてはいけない理由」をテーマにして、食べ終わるタイミングについての考え方をお届けします。

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居残り給食で食べることが嫌いに?

イラスト付き資料食べない子のごちそうさまはいつがベスト
「給食を食べない子の「ごちそうさま」はいつがベスト?」のPDFはこちら(右クリックで保存できます)

居残り給食とは、クラス全体で「ごちそうさま」をした後も、全部食べるまでは片付けることを認めない指導のことです。2014年に行われたとある小学生の先生向けの調査*1によると「こういった指導をいつも行なっている」と回答した先生は約10%にのぼります。

近年、小・中学校での居残り給食は減っている傾向にあると考えられますが、いまだに保育所などでは行われているケースを耳にします。

その一方で「食べられないのに食べなければいけない状態が続けば続くほど、給食の時間や食べること自体が嫌いになる」ケースも多いです。子どもの頃の居残り給食によって、大人になった今でも他人とご飯を食べることができなくなってしまい、悩んでいる方もいます。

居残り給食などの指導によって、児童が精神的に苦痛を感じる場合には「体罰」になりえる*2とも考えられていますので注意しましょう。

子どもが食べる順番と支援のポイント

特に保育士さんからよくある相談として「あまり食べない子や、食べるのが遅い子に対しては、いつ片付けたら良いのでしょうか?」というものがあります。

仮に既定の給食の時間内に全部食べることが出来なかった場合でも、子どもの様子を観察し、食が進まない状態が続いたら、おしまいにして片付けて構いません。

なぜなら、繰り返しになりますが、食べられないのに食べなければいけない状態が続くと、給食の時間や食べること自体が嫌いになるケースも多いからです。

子どもが食べる順番や支援ポイント> ①好きなものから食べようとする 支援のポイント:好きなものだけでお腹いっぱいにならないことが大切です ②食べられそうなものを食べる 支援のポイント:「見た目」を食べられそうなものにすると手を伸ばしやすいです ③その他の気になる物に触れる 支援のポイント:遊んでいると思って、怒ったりしないことが大切です ④まだお腹が空いていたら、口に入れることも 支援のポイント:食べてみたら?の提案は大切ですが、強制は禁物です。 ⑤触っても口をつけない状態が続いたり、遊んだり、立ち歩く 支援のポイント:この様子が見られたら片付けても構いません"

上で示したように、子どもは「好きなもの」から手を付けて、それでもまだ食べたいと思ったら、(主に見た目からの判断で)食べられそうなもの・興味があるものに手を伸ばそうとします。

3分というのは、あくまでも目安としてではありますが、1番大切にしたいのは「いつまでも食べさせることにより、食べることが嫌いにならないようにする」ということです。

聞いてみて「まだ食べたい」という場合

言語やコミュニケーション能力が発達してきたら、子どもに「まだ食べたいかどうか」を聞いてみても良いでしょう。

しかし、それに対して「まだ食べたい!」と答えたのにも関わらず、なかなか食が進まなくて困るという経験をされた方も多いのではないでしょうか?そしてその時には、どのような指導をしたら良いのか悩むと思います。

その際には、結論からお伝えすると食べ終わる予定の時間になったら片づけてしまって構いません。なぜなら、そのまま時間を延ばして食べる習慣が続けば続くほど、ずっとその状態から脱しにくくなるからです。

「まだ食べる意欲が十分ありそうだ」という場合は、「〇〇分までね」と終わりの時間を再提示して、その時間になったら今度こそは片付けるという指導方法もあります。ただ、このような“延長戦”をする場合も1回までにしましょう。(この辺りの指導法やルールについては、職員同士で共有する事も大切になるでしょう。)

食べるのが遅い理由を考えることが大切

食べるスピードが遅くて、時間内に食べきれないケースもあります。その場合には「食べる時間は〇〇分まで(時計の長い針が〇になるまで)ね」等と、事前に食べ終わる時間を明確にして伝えるということで改善されるケースもあります。

しかし、特に「いつも食べるのが遅い」という子の場合は、時間を意識させたり「早く食べて!」と伝えたりしたところで、どうにかなる問題ではありません。

ですから、まずは「どうして、この子は食べるのが遅いのかな?」と、食べるのが遅い理由を考えることが大切です。

<食べるのが遅い理由の例> ・口腔機能の発達に合わないものを食べている ・歯列や骨格の問題 ・イスやテーブルが合わず姿勢が崩れている ・使っている食器を触った感覚が気持ち悪い ・メニューの中に食べられるものが少ない ・生活リズムの問題 ・精神的な問題や体調不良 ・集中できない環境になっている

他にも以前取り上げた「子どもが給食を食べられない3つの理由」も参考になりますので、ぜひお読みいただければ幸いです。この「理由を考える」というプロセスを経ることによって、子どもへの対応はより良いものに変わっていきます。

最後に

今回は保育士さんからお悩みの声が多かった「食べ終わるタイミングや切り上げ方」について取り上げました。

もし「こんなテーマを取り上げて欲しい!」などがありましたら、きゅうけんLINEやマガジンの方からぜひぜひお寄せいただければ幸いです。(いただいた声は編集部が全て目を通しております。)

関連して、子どもへの声かけについては「食べない子になんて声をかけたらいい?」もぜひ、お読みください。

それでは、来月のイラスト付き資料や解説記事も、楽しみにお待ちいただければ幸いです。

参考文献:
*1福岡景奈,赤松利恵,新保みさ,小学校における学級担任による給食指導:―栄養教諭・学校栄養職員と相談している教員の特徴―.2017
*2弁護士ドットコムニュース,学校給食の「完食指導」は体罰か? 会食恐怖症につながるケースも.2018

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本記事の担当編集者
山口 健太

『月刊給食指導研修資料|きゅうけん』 編集長
株式会社日本教育資料 代表取締役
一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会 代表理事

岩手県盛岡市出身。学生時に「会食恐怖症」を発症し、他人と食事ができなくなった経験を持つ。その中で「食べられない」ことへの適切な対応や支援が、子どもたちと関わる教育者に広まっていないことを痛感。メディア「月刊給食指導研修資料|きゅうけん」を立ち上げ「楽しく食べることが、社会の幸せを作る」という思いで活動している。著書に『食べない子が変わる魔法の言葉』(辰巳出版)ほか数冊。

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