毎月、先生のための給食指導に関する情報を、分かりやすく1枚の資料にまとめ、文章でも詳しくお届けします。
資料はご自由に印刷していただいて構いません。小中学校・保育所での給食指導、クラス担任を持つ先生へ配布する資料としてご活用できます。また、新任の先生や職員室内・職員会議にて、全職員に回覧していただくことで、組織全体の業務改善・トラブル回避にもつながります。(資料のダウンロードリンクは記事目次のすぐ下にあります。)
今月は「給食をあまり食べない子の栄養は大丈夫?」をテーマにして、指導のポイントについてをお届けします。
●その他、本テーマに関連する解説記事はこちら
▶︎【図解】給食指導「好き嫌いしないで食べよう!」は難しい?
あまり食べなくても元気な子も
※「給食をあまり食べない子の栄養は大丈夫?」のPDFはこちら(右クリックで保存できます)
研修会などで「給食をあまり食べない子の栄養が心配なので、頑張って食べさせた方が良いのでしょうか?」という質問が届くことがあります。たしかに、小食・偏食などで給食をあまり食べない子に対して、栄養面が心配になる場合も多いと思います。
しかし、ここで注意したいのは、給食時間の残食の多さだけで「栄養不足」と判断し、たくさん食べるようにプレッシャーをかけ過ぎてしまい、結果的に給食時間が苦痛になってしまうことです。
家庭等での食事を含めると充分に栄養摂取ができているかもしれないですし、栄養の摂取状況は人それぞれ違います。同じくらいの年齢の子に比べてあまり食べなくても、毎日元気に過ごせる子がいることも知っておきましょう。
何を基準に栄養不足を判断したらいい?
『日本人の食事摂取基準(2020年版)』(厚生労働省)等を参考にすると、子どものエネルギーの過不足については「成長曲線の推移」を用いて評価することが推奨されています。具体的には、成長曲線のカーブに沿って、緩やかに身長・体重の伸びが見られたら問題はありません。
そもそも発育は個人差があるものです。同じくらいの年齢の子と比べあまり食べないからといって、一概に栄養不足と判断しないように注意しましょう。
推定エネルギー必要量の注意点
また『日本人の食事摂取基準(2020年版)』(厚生労働省)では、推定エネルギー必要量(kacl/日)の参考表というものがあります。
これを見ると、たとえば3〜5歳の男の子の推定エネルギー必要量は、1,300(kacl/日)と表記があります。
ここで間違って認識してしまいやすい注意点があります。それはたとえば「3〜5歳の男の子は1,300kaclを”毎日取らなければいけない”」と認識してしまうことです。しかし、この認識の仕方は正しくありません。
「食事摂取基準」は英語では「Dietary Reference Intakes(DRIs)」と呼ばれています。
これらはそれぞれ
- Dietary=食事の
- Reference=参照(照らし合わせてみる)
- Intakes=摂取
という意味であり、あくまで参照にする値なのです。絶対に守るべき基準値というわけではありませんので注意しましょう。
苦手なものは匂いをかぐところから!
最後に『食に関する指導の手引-第二次改訂版-』(文部科学省)から引用すると、
該当児童生徒の達成感や自信につながるよう、まずは苦手な食品の匂いをかぐだけ、ごく少量を食べてみるなど、偏食の原因を軽減するための取組を段階的に行います。学級担任や栄養教諭は、児童生徒の努力を認め偏食改善への意欲をもてるよう留意します。
とあります。
苦手な食べ物に対しては、匂いをかぐだけでも大切な1つのステップです。
一人一人の性質に合わせて、無理させず少しずつ食を広げていきましょう。子どもが工夫については「食べない子になんて声をかけたらいい?」を一度読んでみることをお勧めします。
最後に
今日は「給食をあまり食べない子の栄養は大丈夫?」をテーマにお伝えしました。
給食における残食は子どもを怒るためのものでもなければ、ご自身のお仕事や指導成果の絶対的な評価になるものでもなく、子どもが食べない理由を考察するとても大切な材料です。こちらについては以前「子どもが給食を食べられない3つの理由」の資料と解説記事にてお伝えしていますので、そちらもぜひご一読ください。
参考文献:
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
- 文部科学省「食に関する指導の手引-第二次改訂版-」
- 香川明夫監修(2021)『八訂 食品成分表 2021』女子栄養大学出版部
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