給食を全部食べないとデザート無し?かけひき指導について【2021年8月】

月刊イラスト付き資料

毎月、先生のための給食指導に関する情報を、分かりやすく1枚の資料にまとめ、文章でも詳しくお届けします。

資料はご自由に印刷していただいて構いません。小中学校・保育所での給食指導、クラス担任を持つ先生へ配布する資料としてご活用できます。また、新任の先生や職員室内・職員会議にて、全職員に回覧していただくことで、組織全体の業務改善・トラブル回避にもつながります。(資料のダウンロードリンクは記事目次のすぐ下にあります。)

今月は、きゅうけんマガジンの読者さんから「取り上げて欲しい!」と声が届いた「給食を全部食べないとデザート無し!などのかけひき指導について」をテーマにして、食べ終わるタイミングについての考え方をお届けします。

●その他、本テーマに関連する解説記事はこちら

▶︎【図解】幼稚園・保育園でも給食の居残りはしてはいけない?

▶︎【図解】完食でご褒美がプレッシャーになっていませんか?メリット・デメリット

“かけひき指導”のメリット&デメリット

【イラスト付き資料】全部食べないとデザートなしってどうなの?かけひき指導について
「給食を全部食べないとデザート無し!ってどうなの?」のPDFはこちら(右クリックで保存できます)

給食指導において「苦手なこれを少し食べられたら、好きなこっちを食べてもいいよ」というような”かけひき”を使った指導が行われることがあります。このような”かけひき”を使った指導にはメリットとデメリット、指導のポイントがあります。

メリットとしては、大人が食べる順番を指導することによって、子どもが好きなものばかり食べることを防ぎ、それによって栄養の偏りを防ぎやすくなることがあります。

一方でデメリットとしては、苦手なものを食べなければいけないことから、子どもの食への意欲が低下することがあります。また、食べない理由を把握できていない上で行うと「無理強い」の形になってしまいやすく、さらなる偏食やトラブルに繋がる可能性もあります。

偏食の指導における要点・留意点

このような指導は「偏食」の子どもに対して行われることがありますが「苦手な食べ物をどうやって勧めたら良いのかが分からない!」という現場での声を研修などでもよく聞きます。

ここでは文部科学省が発行している『食に関する指導の手引-第二次改訂版-』の「第6章:個別的な相談指導の進め方」から「偏食のある児童生徒の具体的な指導方法」の部分を抜粋して確認してみましょう。

(2) 偏食に対する個別的な相談指導の要点・留意点
偏食により食事量が極端に少ない、反対に特定の食品の食べ過ぎにより成長や栄養素の摂取状況に問題がある児童生徒を抽出し、個別的な相談指導を実施します。指導に当たっては、給食時間の状況を踏まえ、該当児童生徒及び保護者への聞き取りを行い偏食の原因を整理しますが、個々の児童生徒の特性や家庭環境等を十分に考慮することが重要です。該当児童生徒の達成感や自信につながるよう、まずは苦手な食品の匂いをかぐだけ、ごく少量を食べてみるなど、偏食の原因を軽減するための取組を段階的に行います。学級担任や栄養教諭は、児童生徒の努力を認め偏食改善への意欲をもてるよう留意します。また、成長期にある子供の偏食は心理的要因も影響することから、栽培、調理、適度な運動による空腹などの体験も有効です。保護者に対しては、不足しがちな栄養素の摂取方法、偏食の原因を軽減する調理方法等について指導します。指導後は、定期的に発育曲線や該当児童生徒の食事内容をもとに、評価と指導内容の再検討を行います。なお、日々の給食指導においては、児童生徒自身が苦手な食品についてその日食べる量を決定し、完食することを目標とした個に応じた指導を継続的に行います。学校給食を教材とした集団指導では、食品の種類やそれぞれの食品の働きについて正しい知識や感謝の気持ちをもち、残さず食べようとする意欲を高めます。そのほか、給食の時間を十分に確保すること、楽しく食事をすることも大切です。給食管理においては、偏食の原因である食品の使用量や調理方法を工夫したり、料理の組み合わせを工夫し1食分の献立としては食べやすいよう留意します。また、調理前の原因食品を給食の時間における食に関する指導に活用することも有効です。

引用元:文部科学省,食に関する指導の手引-第二次改訂版-(平成31年3月),https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/04/19/1293002_9_1.pdf

ここで着目したいのは、

まずは苦手な食品の匂いをかぐだけ、ごく少量を食べてみるなど、偏食の原因を軽減するための取組を段階的に行います。学級担任や栄養教諭は、児童生徒の努力を認め偏食改善への意欲をもてるよう留意します。

児童生徒自身が苦手な食品についてその日食べる量を決定し、完食することを目標とした個に応じた指導を継続的に行います。

という部分です。

このように「段階的に勧めていくこと」や「食べることを強制してはいけないこと」が推奨されています。

立ち止まりたい声かけ
食べない子への関わり方や声かけについては「食べない子になんて声をかけたらいい?【2021年6月】」でイラスト付き資料を元に解説しておりますので、一度お読みいただければ幸いです。

良くない「かけひき指導」の例

これらを踏まえた上で「良くないかけひき指導」の例を以下に挙げます。

(1)食べない理由に沿った対応ができていない
→「食べない」ことには理由があります。その理由に沿った対応をしなければ”かけひき”によって食べても、嫌いが助長されることがあります。

上記のような食べない理由に関して詳しくは「子どもが給食を食べられない3つの理由【2021年4月】」で取り扱っています。

(2)全部食べることが条件
→「全部食べないとデザート無し」などは、やはりハードルが高すぎます。給食の時間自体が苦痛になってしまう可能性があります。

(3)段階的な勧め方になっていない
→臭いを嗅いでみる、ぺろっとだけ食べてみる、米粒大から食べてみるなどの段階を経て、苦手なものにも挑戦できるようになります。いきなり「ひと口」食べることなどは、かけひきの条件としてもハードルが高い可能性があります。

上記イラストはその一部ですが「食べない子になんて声をかけたらいい?【2021年6月】」で紹介しているように「食べない」が「食べられる」に変わるまでには、大きく分けて5つのステップあります。特に、食べられない食材やメニューに関しては「まず、前向きな興味を持ってもらうこと」が大切になります。

そして、イラスト付き資料にも載せましたが「これを食べないとデザートなしだよ!」なのか「これを食べてからデザートにしよっか♪」なのかなど、同じような意味でも伝え方などで受け取る印象は違います。

子どもにとって「食べることが楽しくなるような提案の仕方」を心がけてみましょう。

最後に

今回も読者さんから「このような内容を取り上げて欲しい」といただいた要望を元に、イラスト資料を作成しました!

きゅうけんLINEマガジンから、感想や要望などを送っていただくと、それはそのまま直接編集部に共有されますので、ぜひお気軽にメッセージを送ってくださいね。(これまでのイラスト付き資料を一括でダウンロードすることもできます)

それでは、来月の配信も楽しみにお待ちください!

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本記事の担当編集者
山口 健太

『月刊給食指導研修資料|きゅうけん』 編集長
株式会社日本教育資料 代表取締役
一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会 代表理事

岩手県盛岡市出身。学生時に「会食恐怖症」を発症し、他人と食事ができなくなった経験を持つ。その中で「食べられない」ことへの適切な対応や支援が、子どもたちと関わる教育者に広まっていないことを痛感。メディア「月刊給食指導研修資料|きゅうけん」を立ち上げ「楽しく食べることが、社会の幸せを作る」という思いで活動している。著書に『食べない子が変わる魔法の言葉』(辰巳出版)ほか数冊。

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