毎月、先生や我が子の給食に悩む保護者のための給食指導に関する情報を、分かりやすく1枚のイラスト付きの図解資料にまとめ、文章でも詳しくお届けします。
資料はご自由に印刷していただいて構いません。小中学校・保育所での給食指導、クラス担任を持つ先生へ配布する資料としてご活用できます。職員室内・職員会議にて、全職員に回覧していただくことで、組織全体の業務改善・トラブル回避にもつながります。(資料のダウンロードリンクは目次のすぐ下にあります。)
今回取り上げるのは、読者の皆さんからの要望が多かった「おかわりのルール」について深めていく内容です。
おかわりのルール、先生や保護者の疑問点
※「給食のおかわりについて深めよう①」のPDFはこちらから保存・ダウンロード
※「給食のおかわりについて深めよう②」のPDFはこちらから保存・ダウンロード
先生から「嫌いなものを食べないのに、好きなものをおかわりさせるのは良いのでしょうか?」という疑問が挙がることがあります。
一方で保護者からは「“全部食べないとおかわりできない“っていうのはどうなんですか?」という声を聞くこともあります。
これらに対しては「その子の食の広がりのステップや、苦手の程度を考えた上でチャレンジの提案をしてみる」という考え方が大切です。
以下より、どうしてその考え方が大切かを解説していきます.
食を広げる観点から考える
まず、偏食の改善という観点から考えると、たしかに「好きなものだけ食べられる」という環境では、偏食の改善や食を広げることは難しいです。(この点については「子どもの偏食改善7つのポイント」の記事も参考になります)
なぜなら、子どもは好きなものから食べていき、好きなものがなくなれば食べられそうなものを食べ、食べられそうなものもなくなれば、初めてのものや苦手なものを口に入れるという順番があるからです。
一方で、文部科学省の『食に関する指導の手引き(第二次改訂版)』から引用すると”苦手な食品の匂いを嗅ぐだけ、ごく少量を食べてみるなど、偏食の原因を軽減するための取り組みを段階的に行います”と、あります。
それを踏まえると、例えば「全部食べないとおかわり禁止!」というのは、苦手な食べ物が多い子にとって、厳しいルールになることが多く、推奨できません。
※子ども食べられない理由については「子どもが給食を食べられない3つの理由」の記事を参照してください。
「給食が楽しい!」という観点から考える
そして「給食が楽しい!」と思ってもらえるような時間を作ることも、とても大切です。
なぜなら、楽しいという気持ちが、自分から(たとえば苦手なものも)食べてみようという気持ちを生むこともあるからです。また「楽しい」という感情は栄養の吸収率を上げ、苦手な感覚も和らぎやすい言われています。
「ひと口挑戦する」ことですら、ハードルが高いケースもあるので、その子に応じた挑戦のステップを考えてみるましょう。
そうすると、食を広げることと、食を楽しむことのどちらにも貢献できるかもしれません。
周りからのずるいの声にはどう応える?
これまでの内容に対していただいた声として「苦手なものを少しでも食べたら、好きなものをおかわりをOKにしたときに、全部食べた子どもからすると“ずるい“と感じるのではないか?」というものがありました。
もし、そのような声があがった場合、その声を解消するのも先生の役割と考えてみた時に、どのように解消すればいいでしょうか?
解消するためには、
①食べられないには理由があること
例:Aさんは、苦味を強く感じやすいんだよ。Bさんは、まだ上手に噛むことができないんだよ。
②その理由に応じた支援が必要なこと
例:Aさんは、少しの量から慣れることが必要なんだよ。Bさんには、上手く噛めるように練習が必要なんだよ。
③その子なりのチャレンジをしていること
例:Aさんも、ペロっと舐めてみることからチャレンジしているんだよ。Bさんも、少しかじってみることからチャレンジしているんだよ。
という3つのポイントを伝えることが大切です。
また、おかわりをすることで、栄養のバランスが崩れ、肥満が助長されることもあります。ですから、おかわりする子を「すごい、えらい」などと、褒めなくてもいいのです。この点に関しては、一度「食べ過ぎの助長にも?よく食べる子への声かけは超重要!」をお読みください。
頑張れば、食べられるわけではないことも
速く走れない子に「頑張ったら速く走れるよ」、「速く走れたらご褒美あげるよ」と伝えても、すぐには速く走れるようにはなりません。
同様に、食べられない子も、頑張れば食べられるとは限りません。食べられないのには理由があり、無理に食べさせることによって、さらに嫌いが助長されたり、「いち早く口から無くそう!」と、噛まずに丸呑みして誤嚥や窒息につながることもあります。
「頑張ったら食べられる」という前提で無理に勧めると、嫌いの助長だけではなく、事故やトラブルにつながることがあるので注意が必要です。
好きなものをおかわりはチャンス!
好きなものが食べられるから、苦手なものにチャレンジできるというケースがあります。
そこから考えると、
・全部食べられなくても、好きなものをおかわりできる
・全部食べられなくても、好きなものを「おかわりしたい!」と言える
などの柔軟なルールは、食を広げることにつながりやすいです。
なぜなら、好きなものおかわりしたいと子どもが言ったときに、「じゃあ、こっち(あまり食べないもの、苦手意識があるもの等)も少しだけ、食べてみるのはどう?(※その子にとって、無理のない量)」などのやりとりもしやすくなるからです。
先に減らしていた場合でも、好きなものをおかわりするときに、減らした分を少しだけ“復活“して食べることを勧めるという方法もあります。
柔軟な“おかわりOKルール“は、このようにして、子どもの食の広がりに貢献する工夫につなげることができます。
最後に
いかがでしたか?
「このクラスでは、全部食べないとおかわり禁止です!」などの画一的な指導は、子どもの食を広げるチャンスを逃しているのかもしれません。
これからも、子どもたちにとって、食べることや給食が楽しみと思える時間を大切にしていきましょう。
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