先生だって好き嫌いはある!給食を食べないことも教材に【2025年3月】

月刊イラスト付き資料

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今月は「先生が給食を食べない(食べられない)こと」について掘り下げた内容です。

「先生だからこそ、子どもたちのお手本になるようにしっかり食べなきゃ!」と考えることが多いかもしれません。

しかし、先生でも好き嫌いがあったり、食べられない人もいます。そんな先生は”先生失格”なのでしょうか?

いいえ、そんなことはありません。むしろそんな先生だからこそできる、食育の考え方を紹介します。

先生だからしっかり食べないといけない?


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これまで先生方から

  • 「自分自身の好き嫌いが多い」
  • 「小食で給食の量が多く感じる」
  • 「健康を考えて食べる量を控えたい」
  • 「クラスの残飯を減らすために自分が頑張って食べている」

など先生自身の給食に関する悩みを相談されることがありました。

また、これから先生になりたい学生や実習生のみなさんからも「自分が給食を食べられないので、先生になる夢を諦めようか悩んでいます」という相談をされたことが何度もありました。

やはり「先生だからこそ、子どもたちのお手本になるようにしっかり食べなきゃ!」と考えることが多いようです。

しかし、その考えは本当に正しいのでしょうか?

先生が給食を食べないことは教材になる

給食が苦手、食べられないものが多い……。そんな先生は「私にしかできない食育のやり方がある」と、発想を変えてみましょう!

先生自身に「苦手なものがある」「食べられない理由がある」などは、子どもたちにとって教材の1つであり、貴重な学びの機会です。

「好き嫌いせずに食べることが正しい」という旧来的な考えに縛られることなく、苦手なものがあるのは自然なこと、自分の体と向き合いながら食を考えることが大切など、子どもの視野を広げるきっかけになります。

食べない理由と向き合い方を伝えてみよう

給食を食べられなくても、「なぜ食べない(食べられない)のか」という食べない理由と、それに対して「どう向き合っているのか」を伝えると、子どもたちにとっての学びを提供することができます。

給食を食べられない先生の伝え方2

たとえば、ニンジンが苦手だったら「ビタミンAは代わりにカボチャでも栄養素が取れるんだよ」など、苦手なものがあるのは自然なことで、他の食べ物で栄養を取れることを教える機会になります。

他にも、体質で気持ち悪くなりやすいなら「先生は脂っぽいものを食べると気持ち悪くなるからあまり食べないようにしてるけど、気にしなくていいからね」など、体質や体調によって食べられない場合があることを教える機会になります。

さらに、食べ過ぎないように健康管理をしているなら「健康のために食べる量を●●キロカロリーに抑えないといけない」など、必要なエネルギー量は、年齢や活動レベルによって異なることを教える機会になります。

これ以外にも、大人も子どももアレルギーのため食べられない、宗教的な理由で食べられない、思想的な信念によって特定の食品を食べない場合もありますよね。

「食べない=ダメ」ではなく、1つの学びの機会にしましょう。

どうして「先生なら食べるべき」と考えるのか

それでも毎日給食をモリモリ食べていたり、好き嫌いがほとんどない先生からすると「先生はしっかり食べるべきだ」や「子どもたちが食べたくないとワガママをいうのでは?」と感じるかもしれません。

もしそう感じるなら、その理由はどこにあるのでしょうか。

それは子どもたちに「食べることの大切さを伝えるため」かもしれないし「苦手なものも克服する力を育てるため」かもしれませんが、「大人が頑張って食べること」だけがお手本のすべてではありません。

たとえば、給食を食べるのが苦手な子どもにとって「先生も苦手なものがあるよ。でもこうやって向き合っているよ」と伝えることの方が、ただ完食する姿を見せるよりも、子どもの心に寄り添う大切なメッセージになります。

また子どもたちの中には、体質的に食べられないものがあったり、過去の経験から特定の食材に強い苦手意識を持つ子もいます。

そんなときに「好き嫌いせず食べなさい」と伝えても響かないことが多いです。それで問題が解決するのなら、好き嫌いのある子はこの世にもういないはずです。

だからこそ「どうして食べられないのか?どう向き合えばいいのか?」を一緒に考えることのほうが効果的な場合が多く「好き嫌いなく食べる」という考え以上に「食べることへの悩みを理解し、一人ひとりに合った向き合い方を見つけること」が大切なのです。

最後に

給食に苦手意識のある子は、どんな時代でも一定数います。

むしろ「好き嫌いせずに食べるのが偉い」「残さず食べられるのが偉い」ということ”だけ”を教育された子どもたちは、周りにその価値観を押し付けてしまったり、大人になってからそういう考え方しか出来なくなってしまうかもしれません。

しかし、食育とは単に「残さず食べること」を教えるものではありません。「個人の状況」や「感情」も含めて考慮する必要があるものです。食べられない先生は、無理に食べるようとするのではなく「食べられないことにどう向き合っているか」を伝えることが大切です。

ですから、もし先生である自分が仮に食べられなかったとしても、そんな子どもたちに寄り添える先生として、自信を持って食育に取り組んでくださいね。

※今回参考にした資料:『第4次食育推進基本計画』(厚生労働省)、『食に関する指導の手引-第二次改訂版-(平成31年3月)』(文部科学省)

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本記事の担当編集者
山口 健太

『月刊給食指導研修資料|きゅうけん』 編集長
株式会社日本教育資料 代表取締役
一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会 代表理事

岩手県盛岡市出身。学生時に「会食恐怖症」を発症し、他人と食事ができなくなった経験を持つ。その中で「食べられない」ことへの適切な対応や支援が、子どもたちと関わる教育者に広まっていないことを痛感。メディア「月刊給食指導研修資料|きゅうけん」を立ち上げ「楽しく食べることが、社会の幸せを作る」という思いで活動している。著書に『食べない子が変わる魔法の言葉』(辰巳出版)ほか数冊。

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