毎月、先生のための給食指導に関する情報を、分かりやすく1枚のイラスト付きの図解資料にまとめ、文章でも詳しくお届けします。
資料はご自由に印刷していただいて構いません。小中学校・保育所での給食指導、クラス担任を持つ先生へ配布する資料としてご活用できます。職員室内・職員会議にて、全職員に回覧していただくことで、組織全体の業務改善・トラブル回避にもつながります。(資料のダウンロードリンクは記事目次のすぐ下にあります。)
今回は「感覚的な問題からくる偏食」がテーマです。
偏食の子への指導に悩む先生は多いですが、偏食を”わがまま”と捉えてしまうと適切な指導は難しくなってしまいます。
重要なテーマなので2ヶ月連続の合併号でお届け。前半は「感覚的な偏食についての解説」。後半は「改善のための具体的なアプローチ」をお伝えします。
- 偏食を”わがまま”と捉えると適切な指導は難しい。
- 偏食になる理由の1つに「感覚的な問題」があり理解することが大切。
- 「いま受け入れられる感覚」から少しずつステップアップしよう
●その他、本テーマに関連する解説記事はこちら
偏食の指導で悩む先生は多い!
※「感覚的な問題からくる偏食①」のPDFはこちらから保存・ダウンロード
※「感覚的な問題からくる偏食②」のPDFはこちらから保存・ダウンロード
偏食が多い子の指導に頭を悩ませる先生は多いです。以前「先生45人に聞いた!給食指導でのコツや大切なこと&悩みの1位は?」でも紹介した通り、調査でも「好き嫌いが多い、偏食の子への指導」という指導の悩みが1番多くありました。
そして、偏食で極端に食べられるものが少ない子がいますが、その場合は「感覚的な問題」が絡んでいることが多くあります。
指導を考える際にまず大切なのは「偏食はわがままではない」と認識すること。その上で受け入れられる感覚を少しずつ広げていくことです。
特別支援学級にも多い?感覚の問題
特に、感覚過敏(人よりも強く感じやすい)や感覚鈍麻(人よりも感じにくい)があると、食べることへの困難につながります。発達障害がある子の場合によくその傾向があるので、特別支援学級の先生はぜひ知っておきたいところです。
また、発達障害に関係なく、感覚はそもそも人それぞれという前提に立つことも大切です。
偏食を改善するために1番大切なこと
苦手なものに無理に挑戦させると、嫌な記憶が残りさらに嫌いになってしまうことがほとんどです。
また、それは以下のようなプロセスを経て“食わず嫌い”にもつながっていきます。
①刺激…苦手なものを無理に口に入れた
②反応…「美味しくない!」などと感じる
③記憶…「この食べ物は美味しくないぞ」と記憶が定着
④予期…「前に食べたこの食べ物は美味しくないから食べないでおいた方が良いな」と予期して食わず嫌いになる
ですから大切なのは、好きな感覚・今の受け入れられる感覚を見つけて、そこから広げていくことです。
偏食を改善していくための具体的な方法
ここから偏食を改善し、食べられるものを増やしていく具体的なアプローチを3つのステップに分けてお伝えしていきます。
Step1.いま食べられるものをリストアップする
受け入れられる感覚を見つけるために、まずは「いま食べられるもの」を上記を参考にリストアップしてみましょう。
その際、その子の苦手な食材・調理法・感覚などが既に分かっている場合は、そちらも同時にメモをしておくのもオススメです。
Step2.5つの視点から受け入れられる感覚を見つける
Step1のようにリストアップしたら、5つの視点から振り返り、好き・受け入れられる感覚を発見しましょう。
Step3.いま食べられるものから段階的に広げる
好き・受け入れられる感覚が見えてきたら、それをベースに食べられるものから段階的に食べられるものを増やしていきます。
これは1週間〜2週間などの話ではなく、半年から〜2年をかけて焦らずゆっくりと食べられるものを増やしていくイメージが大切です。
補足:食べる順番・好きな食べ物の割合に気をつけよう
好きなもの以外に手を伸ばしてもらうには、食べる順番や好きな食べ物を提供する量や割合を見直すことも大切です。
「【図解】幼稚園・保育園でも給食の居残りはしてはいけない?」でお伝えしたように、子どもは好きなものから口をつけて、それでもまだお腹が空いていたら、好きではないものを食べること検討します。
ですから、家庭の場合は、好きなものだけでお腹が満たされないように好きなものの全体量を抑えることや、おやつや間食を与えすぎないことも大切になります。(ごはんの時に食べなくても間食でお腹が満たされるのであれば、わざわざ食事の時間に好きなもの以外を食べる必要がないため)
偏食対応の実践動画をご紹介!
ここまでお伝えしてきた偏食改善へのアプローチですが、以前私がTV出演をして、上記の内容を実践したものがありますので、ぜひ「こちらの動画(外部サイト)」でもみて見てください。
この動画では、ほうれん草を苦手な子どもが、ほうれん草をパクリと食べ、しかも「おかわり」までしたというミラクルが起きています。一体わたしは何をしたのでしょうか・・・?
調理に関与できない場合
給食の場合は特に、調理をする人(栄養士・調理士)と、食事の指導をする人(先生)は別々であることが多いです。
調理に関与できなくても、これまでお伝えしてきた視点を持って偏食の子どもを見守ることはとても重要です。
また「食べてみたら?」という提案が通るかどうかは、これまでの信頼関係も深く関わっていきますので、苦手なものを無理に勧めてはいけません。
こういった子ども対する声かけは「【図解】食べない子になんて声をかけたらいい?」や「【図解】子どもへの食事における声かけ変換表」の記事もぜひ参考にしてみてください。
最後に
いかがでしたか?
今回は、感覚的な問題から偏食について2ヶ月連続(合併号)として取り上げました。
「食べないのはわがままではない」という前提の元、楽しく食べることの大切さがあった上で、今回お伝えした具体的なアプローチもできるところから参考にしてみてください。
感覚的な問題からくる偏食は、特別支援学級に多いです。特別支援学級での偏食改善の事例については以前「【事例】給食で牛乳が飲めない子どもの支援と実践」の記事でも取り上げていますので、こちらもぜひご覧ください。
▼合わせて読みたい


・山根 希代子 (監修), 藤井 葉子 (著),『発達障害児の偏食改善マニュアル』(2019,中央法規出版)
・栗本啓司,『感覚過敏は治りますか?』(2018,花風社)
・熊谷高幸,『自閉症と感覚過敏―特有な世界はなぜ生まれ、どう支援すべきか? 』,(2017,新曜社)