給食指導「減らしたら全部食べなさい!」ってどうなの?【2022年2月】

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今月は給食指導の際の疑問としてよくある「苦手なものを先に減らすのってありなの?」、「減らしたら全部食べさせるべき?」などについて取り上げていきます。

●その他の指導の疑問シリーズはこちら

▶︎「完食ご褒美シール」がプレッシャーになっていませんか?

▶︎給食を全部食べないとデザート無し?「かけひき指導」について

「減らす指導」ってどうなの?

vol.13_「減らしたら全部食べなさい」ってどうなの?
※『「減らしたら全部食べなさい!」ってどうなの?』のPDFはこちら(右クリックで保存できます)

近年、給食で最初に配膳された量が多い・苦手で食べることができないと感じた場合に「食べる前に減らしても良い」という指導が増えてきています。

具体的にはいただきますの前に減らしたい人はいますか?」と声をかけたり、先生が子どもたちを回りながら減らすことを促したりなどになりますが、これは安心して給食時間を過ごすことにもつながりますし、子どもの食を少しずつ広げるためにも良い指導の方法です。

減らすことを提案するイラスト

また、最近はコロナ禍の給食ということで、接触を減らすためにこの「減らす指導」を控えることも増えています。その状況の中で食べられない子やその保護者の方から「最初に減らすことができないので大変だ」という声が届くことからも、子どもたちにとっても助かっていることが多いことがわかります。

減らしたら全部食べなさいがNGな理由

一方、ここでよくあるNG指導が「減らしたんだから、その分は全部食べなさい!」というように”減らしたものは全部食べるルール”にしてしまうということです。

以前「【図解】食べない子になんて声をかけたらいい?」等でもお伝えしたように、食べられるまでには段階があるのです。
食べない子が食べられるまでのステップの解説図
最初は匂いをにおいだり、少しぺろっとすることからでもOKです。

実際、文部科学省が発行している『食に関する指導の手引(第二次改訂版)』の第6章第5節によると、偏食に対して①まずは苦手な食品の匂いをかぐだけ②児童生徒自身が苦手な食品についてその日食べる量を決定、等の記載があります。

「減らしたら全部食べなければいけない」というのはとてもハードルが高く、避けたい指導方法なのです。そのルールがプレッシャーになって、食への意欲の低下を招いているかもしれません。

大切なのは量を減らすことではなく、食べなければいけないというプレッシャーを減らし、食べることや給食時間での安心感を育むことなのです。

確認したい3つのポイント

ここで「減らす指導」を行う際に、確認したい3つのポイントを確認してみましょう。

給食指導3つのポイント

①子ども自身が決めている?
食べる量を子ども自身が決めた形になっているかを確認してましょう。

②「ひと口」はハードルが高いものだと認識できている?
「苦手なものをひと口食べること」は、子どもにとってもハードルが高いことだと確認してましょう。

③段階的な勧め方になっている?
見る、触れる、匂いをかぐ、少し口をつける…というように段階的な勧め方になっているかを確認してみましょう。

食べられるまでのプランを立てるヒント

こちらの解説記事では、研修会などでお伝えしている「子どもの食を広げるプラン」を立てるヒントを抜粋して紹介します。

食べられるまでのプランを立てるためには、

  1. まずはその子の食の現状を把握して適切に評価(アセスメント)する
  2. 食べられない理由を考察する
  3. できる支援や対応の優先順位をつける

というPDCAサイクル回すことが基本です。

食べない子が食べられるまでの支援の道筋

「PDCAサイクル」というと、スピード重視で機械的な印象を受けますが、実際のところは自分たち(職員)や、子どもたちのその日の体調などを考慮しながら、取り組みやすいところから、無理なく行なっていくことが大切です。

アセスメントの要素はいくつかありますが、特に基本事項として知って欲しい部分としては、以前「給食をあまり食べない子の栄養は大丈夫?」という記事でまとめていますので、そちらを参考にしてみてください。

食べられない理由については、

  1. 精神的な理由
  2. 機能的な理由
  3. 感覚的な理由

という3つから考えることが大切ですが、こちらも以前に「子どもが給食を食べられない3つの理由」という記事で要点をまとめていますので、そちららもぜひ参考にしてみてください。

最後に

いかがでしたか?

まとめると、

  • 減らす指導は子ども達が安心することにつながる
  • 「減らしたら全部食べなさい」はNGである
  • 量ではなく食べることへのプレッシャーを減らすことが大切
  • 子ども自身が決めることが大切

というのが今回の要点になります。

今回の「減らしたら全部食べなさい」というテーマは先生だけではなく、保護者からも疑問の声が多く届くものでした。今回の記事が楽しく安心できる給食時間を増やすことにつながれば幸いに思います。

その他の指導の疑問シリーズとして『「完食ご褒美シール」がプレッシャーになっていませんか?』『給食を全部食べないとデザート無し?「かけひき指導」について』もぜひお読みください。

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本記事の担当編集者
山口 健太

『月刊給食指導研修資料|きゅうけん』 編集長
株式会社日本教育資料 代表取締役
一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会 代表理事

岩手県盛岡市出身。学生時に「会食恐怖症」を発症し、他人と食事ができなくなった経験を持つ。その中で「食べられない」ことへの適切な対応や支援が、子どもたちと関わる教育者に広まっていないことを痛感。メディア「月刊給食指導研修資料|きゅうけん」を立ち上げ「楽しく食べることが、社会の幸せを作る」という思いで活動している。著書に『食べない子が変わる魔法の言葉』(辰巳出版)ほか数冊。

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