登校拒否の場合も!給食を嫌がる子どもにどうすればいい?【2022年1月】

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今月は「給食を食べられなくなった子にどうすればいい?」をテーマにして、子どもに対してどのように接したらいいのかを、具体的な声かけや質問の例などを取り上げながら、紹介していきます。

●こちらの記事もおすすめです!

▶︎クラスに約4人も?給食が「かなり苦手」な子どもの心境

▶︎他人と食事ができない病気?先生でもわかる会食恐怖症

嫌で登校を拒否する場合も?


※「給食を食べられなくなった子にどうすればいい?」のPDFはこちら(右クリックで保存できます)

「給食を食べられなくなってしまった子に対して、先生としてどのように接したら良いのか分からない」そのような声をよく聞きます。
登校拒否イラスト

ここで『食に関する指導の手引-第二次改訂版-(平成31年3月)』(文部科学省)を見てみましょう。

第6章1節「個別的な相談指導の基本的な考え方」から「指導上の留意点」のところに着目すると、以下のような留意点が挙げられています。

個別的な相談指導を行うに当たって、次の点に注意が必要です。
① 対象児童生徒の過大な重荷にならないようにすること。
② 対象児童生徒以外からのいじめのきっかけになったりしないように、対象児童生徒の周囲の実態を踏まえた指導を行うこと。
③ 指導者として、高い倫理観とスキルをもって指導を行うこと。
④ 指導上得られた個人情報の保護を徹底すること。
⑤ 指導者側のプライバシーや個人情報の提供についても、十分注意して指導を行うこと。
⑥ 保護者を始め関係者の理解を得て、密に連携を取りながら指導を進めること。
⑦ 成果にとらわれ、対象児童生徒に過度なプレッシャーをかけないこと。
⑧ 確実に行動変容を促すことができるよう計画的に指導すること。
⑨ 安易な計画での指導は、心身の発育に支障をきたす重大な事態になる可能性があることを認識すること。
※『食に関する指導の手引-第二次改訂版-(平成31年3月)』(文部科学省)より引用

また「給食が嫌い」、「苦手」といっても、その程度は人それぞれです。給食時間を想像しただけで体調不良になる場合や、登校拒否をするレベルの場合もあれば、少し苦手意識はあるけれども、楽しく過ごせることもできる程度の苦手もあります。

ですから、これらを踏まえた上で大切にしてほしいことは、まずは子どもが抱える不安な気持ちを認めた上で「どうすれば安心できるか」を丁寧に聞き、その子のペースを尊重しながら、少しずつチャレンジできる幅を広げていくことです。

大切にしたい3つのステップ

対応に困った時には、以下の3つのステップを思い出しましょう。

子どもが給食が嫌いな時に大切にしたい対応のステップ図解

それぞれのステップで大切なことを簡単に解説していきます。

ステップ1.子どもの気持ちを認めよう

子どもの話を丁寧に聞いて、不安な気持ちを認めるようにしましょう。大人の価値観からくる「こうした方が良いのでは?」を一旦置いて、子どもの素直な気持ちを受け入れようとすることが大切です。

ステップ2.食べられない理由を聞いてみよう

子どもの「食べられないこと」には必ず理由があります。その理由を聞いてみましょう。食べられない理由の解説は、以前取り上げた「子どもが給食を食べられない3つの理由」を参考にしてください。

ステップ3.どうしたいかを本人と決めよう

「給食が嫌」だとしても、そこからどうしたいのかも、その子によって違います。ですから、今後どうしていきたいかを大人が決めるのではなく、子ども主導で一緒に考えながら決めていくことが大切です。

子どもに聞いてみたいことの例

子どもに聞いてみたいことの例して、以下のようなものが挙げられます。
子どもが給食で登校拒否の時に聞いてみたいことの例の図解

「そもそも、保育園・学校には行きたい?」
意図:そもそも、保育園や学校に行きたいと思っているかどうか、ここから聞いてみることが大切です。他の関連した問題が浮かび上がることもあります。

「教室ではなく、別室だったら食べられる?」
意図:教室でクラスメイトや担任の先生が一緒だと食べられないけれども、別の空き教室や保健室などだったら比較的安心して食べられる場合があります。

「給食ではなく、お弁当だったら食べられる?」
意図:給食では食べられないけれども、お家から持ってきたお弁当だったら比較的安心して食べられる場合があります。

「他の子たちに食べられないことをどう伝える?」
意図:例えば教室を離れて別室で食べることにした場合などで、それをどのように周りのクラスメイトに伝えるかどうかも大切な問題です。

「それを自分で伝える?先生が伝える?」
意図:自分でクラスメイトに伝えたいかか、先生が伝えた方が子どもにとっては安心するか、どちらが良いのかを考えることも大切です。

重要な認識として、給食が食べられなくなった子が、食べられるようになるためには「安心感」が何よりも大切だということ。そして、安心感があった上で給食時間を過ごしてもらえるように、関わり方を工夫する必要があるということです。

また、お子さん自身が「自分で決めたのだ」という感覚を持てるように、コミュニケーションを取ることも、その後の行動につながるかどうかという意味では大切な視点です。周りの大人は「本人が決めることをサポートする」というスタンスを心がけましょう。

どれくらいで給食に復帰できる?

「給食を拒否してからどれくらいで復帰できるのか」というと、半年〜1年前後くらいの心積もりをしておくのが良いと考えます。(その子にとって安心した環境を作ることができれば、その時間は短くなります。)

ただ、イメージを持っておいて欲しいのは、以下の図のように必ず波があるということです。

食欲には波がある

(※『食べない子が変わる魔法の言葉』(辰巳出版)より図を引用)

また、クラス替えにより担任やクラスメイトが変わったなどのタイミングなどで、環境が変わることをきっかけに、給食時間に復帰することもあります。

焦らずに、その子のペースを大切にしながら「安心できる給食時間」を作っていきましょう。

最後に

いかがでしたか?

本記事の要点をまとめると、

  • 給食を嫌がる子どもに大切なのは「安心できる給食」
  • 3つのステップで対応を考えてみよう
  • 聞いてみたいこと参考に本人に聞いてみよう
  • 波はあるものだから、焦らずサポート

というところになると思います。

他にも以前取り上げた「クラスに約4人も?給食が「かなり苦手」な子どもの心境」や「食べない子になんて声をかけたらいい?」なども読んでいただくと、より本記事の内容への理解も深まります。

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本記事の担当編集者
山口 健太

『月刊給食指導研修資料|きゅうけん』 編集長
株式会社日本教育資料 代表取締役
一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会 代表理事

岩手県盛岡市出身。学生時に「会食恐怖症」を発症し、他人と食事ができなくなった経験を持つ。その中で「食べられない」ことへの適切な対応や支援が、子どもたちと関わる教育者に広まっていないことを痛感。メディア「月刊給食指導研修資料|きゅうけん」を立ち上げ「楽しく食べることが、社会の幸せを作る」という思いで活動している。著書に『食べない子が変わる魔法の言葉』(辰巳出版)ほか数冊。

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