毎月、先生のための給食指導に関する情報を、分かりやすく1枚の資料にまとめ、文章でも詳しくお届けします。
資料はご自由に印刷していただいて構いません。小中学校・保育所での給食指導、クラス担任を持つ先生へ配布する資料としてご活用できます。また、新任の先生や職員室内・職員会議にて、全職員に回覧していただくことで、組織全体の業務改善・トラブル回避にもつながります。(資料のダウンロードリンクは記事目次のすぐ下にあります。)
今月は「子どもが食事中に出すSOSのサインとは?」をテーマにして、指導のコツやチェックポイントについてをお届けします。
●その他、本テーマに関連する解説記事はこちら
▶︎【図解】どうする?食べるのが遅い子ども(保育園児・小学生向け)
▶︎【図解】子どもが食事を吐き出した時に、周りの大人はどうしたらいいのか?
子どもが食事中に出すSOSサインとは?
※「子どもが食事中に出すSOSのサインとは?」のPDFはこちら(右クリックで保存できます)
子どもは「食べることが苦痛になっている」ときに、それを言葉では説明せずに(できずに)表情や言動で出すことがあります。
それを知らないと「わがままな行動」や「よくあること」と見過ごしてしまうこともありますので、給食の時にあまり食が進まない子に対して、以下のようなSOSサインが出ていないかをチェックしてみましょう。
SOSサイン・チェックリスト
- 吐き出す
- 泣き出す
- 口に溜め込む(ずっとモグモグ)
- 水をよく飲む
- ゲップやオナラをする
- 口数が減る
- 無表情になる
- 知らないことがあっても大丈夫
- できないことがあっても大丈夫
- 間違い(ミス)をしても大丈夫
- 人の足を引っ張ってしまっても大丈夫
- 人に迷惑をかけてしまっても大丈夫
- 落ち込んでネガティブになっても大丈夫
解説:食べたものをベーっと吐き出すことがあります。大人からすると「汚い」「困る」行動ですが、実はこれは「今の自分には合わない」というサインです。小さい子どもは特に、言葉では表現できないからこそ、このような行動をとります。詳しくは「子どもが食事を吐き出したらどうする?」でも解説しているのでお読みください。
解説:わがままで泣いているように感じてしまうかもしれませんが、これも「理由があって食べられないけど、それも自分では説明できない」という気持ちの表現です。
解説:食べることに対する不安や緊張感が高いと嚥下機能が低下し、ずっともぐもぐして口に溜め込むことが多くなります。
解説:食べることに対する不安や緊張感が高いと嚥下機能が低下し、それを流し込もうとすることで水を飲む回数が増えることがあります。
解説:呑気症(空気嚥下症)といって、緊張などによって無意識に空気を吸い込む量が増えると、ゲップやオナラの回数が多くなることがあります。
解説:普段はよく会話をする子にも関わらず、食事の際に緊張を感じていると極端に口数が減ることがあります。
解説:普段は表情が豊かなのにも関わらず、食事の際に緊張を感じていると無表情でいることが多くなることがあります。
以上のものは、分かりやすいものもあれば、知っていないとSOSのサインと理解できないものもあるでしょう。そして、いつも給食の様子を観察している先生だからこそ、気づけることも多くありますので「楽しく食べること」を念頭に、無理させずに食の広がりをサポートしていきましょう。
「食べられない」と言える環境作りの大切さ
これらの「SOSのサイン」は”苦手な食べ物があっても言いだしにくい環境にある”とか”「食べられない」と言ったら怒られてしまう環境にある”場合に出やすいです。
他にも、給食時間が近づくと体調不良を訴えたり、苦手な食べ物を床に落とす、隠れてティッシュに出す、ということもありますが、これらは子どもにとっても苦肉の策であることが多く、その行為を怒るよりも先に考えるべきことがあります。
それは、「安心して食べられないことを表現できる環境」を作ることです。
心理的安全性(サイコロジカル・セーフティ/psychological safety)は「(ありのままの自分でも)安心してその環境に身置けるかどうか」のことで「成果の出るチームや組織」を作り上げる時に1番の土台として、大切だと言われているものです。
具体的には、
という環境が作られていると「心理的安全性が高い」と言えて、結果が出やすいチームであると言えます。
上記のことは「給食時間」にも共通する部分が多いと感じます。「食べられない」と子どもが素直に言えることは、安心できる給食時間の証です。そうなっているのかどうかを確認してみましょう。
最後に
今月の内容はいかがだったでしょうか?
子どもが食べない時に、周りの大人がどのような対応をするのかで、その子の食の広がりは大きく変わっていきます。
「子どもが給食を食べられない3つの理由」で解説している通り、子どもが食べないことには必ず理由があります。該当する子どもがどうして食べられないのかを正しく知るためにも「食べられない」と素直に言える環境は大切です。
まずは本資料を周りの職員などに共有するなどして、共通理解・共通認識を育んでいきましょう。
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