毎月、先生のための給食指導に関する情報を、分かりやすく1枚のイラスト付きの図解資料にまとめ、文章でも詳しくお届けします。
資料はご自由に印刷していただいて構いません。小中学校・保育所での給食指導、クラス担任を持つ先生へ配布する資料としてご活用できます。職員室内・職員会議にて、全職員に回覧していただくことで、組織全体の業務改善・トラブル回避にもつながります。(資料のダウンロードリンクは記事目次のすぐ下にあります。)
今月は「食べることに対して苦手意識がある子に対して、どのような言葉かけをしたら良いのか」について調査結果などを元にお伝えしていきます。
知っておくだけでも給食指導のヒントになりますので、ぜひ読んでみてください。
- 「他人との食事がかなり苦手」な人の割合は10人に1人以上
- 大人の言葉かけによって子どもの食欲は増減する
- 食べるのが苦手な子に対して「たくさん食べないと大きくなれないよ」や「残さず食べなさい」と言葉かけをすると「食欲は低下」する。
- 「食べられる分だけ食べたらいい」「残してもいい」と言われると「食欲が増加」する
●その他、本テーマに関連する解説記事はこちら
▶︎【図解】クラスに約4人も?給食が「かなり苦手」な子どもの心境
大人の言葉によって子どもの食欲は変わる
※『大人はつい言ってしまう?子どもの食欲低下を招く言葉』のPDFはこちら(右クリックで保存できます)
大人が、食べない子に対してつい言ってしまう言葉が子どもの食欲低下を招くことがあります。
例えば「たくさん食べないと大きくなれないよ!」、「残すなんてもったいない!」などもその一例です。
そのような言葉によって子どもがどう感じるのか。そして、どのような言葉をかけたら安心し、食欲が湧くのかについて、まずは知ることが大切です。以下より詳しく見ていきましょう。
「たくさん食べないと大きくなれないよ」等で食欲は低下
子どもの頃から食べることに苦手意識があった方23人に向けた調査*1によると、「食事の場面において、以下の中で子どもの頃に実際に言われて嫌だったと思うもの全てを教えてください」に対しての回答で、5つの選択肢の中から1番多かったのは「残さず食べなさい」でした。
さらに「子どもの頃に『たくさん食べないと大きくなれないよ』と言われた時に食欲が湧きましたか?」の設問に対して、1番多かったのは「食欲は低下した」の回答で43.5%、「食欲が増加した」の回答は0人(0%)。
また「子どもの頃に『残さず食べなさい』と言われた時に食欲が湧きましたか?」の設問に対して、1番多かったのは「食欲は低下した」の回答が73.9%で、「食欲が増加した」の回答は1人(4.3%)でした。
上記の言葉がけは、食べていない子に対して「もっと食べるように」と発破をかける時に使われることが多いと思いますが、それぞれ「食欲は低下した」の回答が1番割合が多く、逆効果であることが分かります。
「食事がかなり苦手」が10人に1人以上
では、そもそも、食べることを苦手と感じている人の割合はどれくらいいるのでしょうか?
こちらは「【図解】クラスに約4人も?給食が「かなり苦手」な子どもの心境」の記事でも取り上げた通り、全国の男女1000人に向けた調査によると「他人と食事をするのに苦手意識はありますか?」という問いに対して「かなり苦手意識がある」と答えた割合は12.1%(1000人中121人)でした。
これは、小学校のクラスに換算すると、1クラスに約4人が該当することになります。
上記の調査の場合で「やや苦手意識がある」という人も含めると、全体の47.2%が「他人との食事に苦手意識がある」と回答しているので、見過ごせない割合です。
「残してもいい」で食欲が増加するメカニズム
では、食べることに対して苦手意識のある子に対して、どのような言葉掛けをしたら良いのでしょうか?
調査結果*1によると、「子どもの頃に食欲が湧かない時に、周りの大人からどのような言葉をかけられたら食欲が湧いたと思いますか?」という設問から多かった回答をまとめると「食べられる分だけ食べたらいいよ」、「無理して食べなくてもいいよ」、「食べられなかったら残してもいいよ」という回答が多く挙がっていました。
そして、子どもの気持ちとして「美味しく、たくさん食べられるなら食べたいのに、食べられないから困っている」というものがあることを知っておくことも大切です。
最後に
今月号はいかがでしたか?
今回の要点は、
- 大人の言葉かけによって子どもの食欲は増減する
- 食べるのが苦手な子に対して「たくさん食べないと大きくなれないよ」や「残さず食べなさい」と言葉かけをすると「食欲は低下」する。
- 「食べられる分だけ食べたらいい」「残してもいい」と言われると「食欲が増加」する
というところになると思います。
「食べて欲しいから」こそ、ついついこのような言葉を掛けてしまうこともあると思いますので、知っておくだけでも大切です。ぜひ、周りの職員のみなさんと共有しながら話し合ってみてください。
きゅうけんは読者さんの声や要望を大切にしております。「こういった内容について取り上げて欲しい!」などのリクエストがありましたら、これからも「きゅうけんマガジン」などからぜひぜひお声をお寄せください!
参考文献:
*1株式会社日本教育資料.「子どもの頃の食事について」調査報告.2022
*2株式会社日本教育資料.ライフスタイルに関する調査報告その1.2020
*3松阪市.学校給食アンケート調査 結果報告書 2020
*4安芸高田市学校給食検討会議.学校給食と食生活に関する アンケート調査報告.2006
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