【給食指導】「食べない子」によくある5つの誤解。正しい理解と対応

きゅうけんサムネ58 月刊イラスト付き資料

【結論】「食べないのはわがまま」「親の育て方のせい」そのような見方は、最新の研究では誤解であることが分かっています。5つの誤解と正しい理解を知ることで、子どもへの関わり方が変わります。

【根拠】子どもが食べられない背景には、口腔機能の発達・感覚過敏・心理的な不安など、本人の意志ではどうにもならない理由があります。国内外の研究や学会の見解でも、これらの要因が明らかにされています。

【本記事を読むメリット】よくある5つの誤解と、それに対する正しい理解を根拠とともに解説。明日からの給食指導や家庭での声かけに役立つヒントが得られます。

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Vol.57『「食べない子」に存在する5つの理解のギャップ』(PDFを保存できます)

「あの子が食べないのはわがまま」「食べないから体が小さいんだ」……食べない子を前に、このように感じたことはありませんか?

しかしよくある「思い込み」や「これまでの常識」と最新の知見のあいだには、大きなギャップがあるかもしれません。

今回は「食べない子」によくある5つの誤解と正しい理解について解説。

誤解に気づくと子どもへの関わり方が変わります。以下より確認してみましょう!

なぜ「誤解」が生まれるのか?

結論:これまでの「常識」や過去の経験が誤解を生む原因になっています。

「食べない子」への対応は、先生や保護者自身が子どもの頃に受けた経験がベースになりがちです。

とある調査*によると、小学校の先生が給食指導で参考にしていることの1位は「自分自身が家庭で受けた教育」(59.6%)、2位は「自分自身が小学校の時に受けた給食指導」(45.6%)というものもあります。(複数回答有りでの回答)

(*福岡景奈,赤松利恵,新保みさ,小学校における学級担任による給食指導:―栄養教諭・学校栄養職員と相談している教員の特徴―.2017)

「自分は子どもの頃に大人にこう言われた」などの経験則が、無意識のうちに自分の基準になっているかもしれません。

しかし最新の知見では、これまでの常識と大きく変わっているものも多いです。また、食べられない理由は子どもによってさまざま。自分の経験だけでは対応しきれないケースも少なくありません。

【ポイント】
「自分はこうだった」「昔はこう言われていた」という経験則や過去の常識だけでなく、最新の知見を知ることが大切。以下より、よくある5つの誤解を見ていきましょう。

誤解1:食べないのは「わがまま」

食べない子のよくある誤解1

【誤】誤った理解

「食べないのは、わがままを言っているだけ」「甘えているだけ」

【正】正しい理解

「わがままで食べない」のではなく「食べられない理由」があります。

子どもが食べられない背景には、以下のような要因があります。

  • 口腔機能の問題:お口の形態の問題、お口の動き(噛む・飲み込む)機能が未発達など
  • 感覚的な過敏:食感・におい・温度などに敏感など
  • 心理的な不安:新しい食べ物への警戒心、過去の嫌な経験など
  • 新奇恐怖:初めてのものを怖がる本能的な反応

これらは本人の気持ちではどうにもならない理由であり「頑張れば食べられる」というものではありません。

【現場でのヒント】
「食べないのはわがまま」ではなく、「食べられない理由は?」と、食べられない理由を探る視点を持ちましょう。「子どもが食べられない3つの理由」「食べない子になんて声をかけたらいい?」も参考になります。

誤解2:お腹が空けばそのうち食べる

【誤】誤った理解

「お腹が空けば、そのうち食べるようになる」

【正】正しい理解

お腹が空いていても、食べられないことがあります。

不安・緊張・興奮状態にあると、交感神経が優位になり、以下のような変化が起こります。

  • お口の動きが低下:唾液が出にくくなり、噛む・飲み込む動きが鈍くなる
  • 脳への影響:ストレスホルモンが摂食中枢を抑制し、空腹感そのものを感じにくくなる
  • 消化器官の働きが低下:胃腸の動きが抑制され、食べ物の消化が進まない

つまり「空腹だから必ず食べられるわけではない」のです。

【現場でのヒント】
食べないときは、「食べることにストレスを感じていないかな?」「不安なことはないかな?」と、心理面にも目を向けてみましょう。

誤解3:親の育て方、甘やかしのせいで食べない

食べない子のよくある誤解3

【誤】誤った理解

「親が甘やかしているから食べないんだ」「育て方の問題では?」

【正】正しい理解

子どもの食の問題(選り好みする特性)のうち、親の養育要因が占める割合はごくわずかです。

最新の研究4)によると、親の養育要因は生後16ヶ月前後で2割程度、3歳以降は実質0%と言われています。

つまり、「親の育て方が悪い」というのは、ほとんどの場合当てはまらないのです。

食べられない原因の多くは、感覚的な問題・口腔機能の発達・医学的な要因など、親の努力だけではコントロールできないものです。

3歳を過ぎると、親の育て方が偏食の『原因』になることは統計上ほぼありません。しかし「良かれ」と思って続けている現在の家庭での習慣が、図らずも偏食を『固定化』『長期化』させている可能性はあります。改善していくためにはその部分へのアプローチが必要です。お子さんの特性を受け入れ、親が原因ではないことを認めつつ、家庭での習慣や対応を『変える必要があるもの』として見直していく。この2つを切り分けて支援することが大切です。
【現場でのヒント】
保護者を責めるのではなく、「一緒に原因を探りましょう」「お家での様子を教えてください」と協力関係を築くことが大切です。

誤解4:嫌がっていたとしても、ひと口だけでも食べさせた方がいい

食べない子のよくある誤解4

【誤】誤った理解

「嫌がっていても、ひと口だけでも食べさせた方がいい」

【正】正しい理解

食べることへの圧力は、食への嫌悪感を強め、逆効果になることが研究で示されています。

Gallowayらの研究5)では、食べることへのプレッシャーが、かえって食への嫌悪感を強めることが明らかになっています。

「ひと口だけ」のつもりでも、子どもにとっては大きなプレッシャーになっていることがあります。

  • 「食べなさい」と言われるほど、その食べ物が嫌いになる
  • 食事の時間自体がストレスになる
  • 「給食=つらい時間」という記憶が残る
【現場でのヒント】
無理に食べさせるのではなく、「見るだけ」「においをかぐだけ」「触ってみるだけ」といったスモールステップで、食への抵抗感を減らしていきましょう。

誤解5:食べないからこの子は体が小さい

食べない子のよくある誤解5

【誤】誤った理解

「食べないから体が小さいんだ」「もっと食べれば大きくなるのに」

【正】正しい理解

因果関係が逆のことがあります。「少食という特性を持って生まれたから、結果として小さくなりやすい」と考える方が科学的に正確です。

Llewellynらの研究6)によると、「すぐお腹いっぱいになる」という特性は、約7割が遺伝で決まっているという結果が出ています。

つまり、体が小さい子は、もともと少食の特性を持って生まれている可能性が高いのです。

「もっと食べれば大きくなる」と無理に食べさせても、本人の特性と合わなければ逆効果になりかねません。

【現場でのヒント】
「食べる量には個人差がある」ことを前提に、その子に合った量や支援の仕方を一緒に探っていく姿勢が大切です。

5つの誤解まとめ対比表

今回ご紹介した5つの誤解と正しい理解を、表にまとめました。

誤解 正しい理解
【誤】食べないのは「わがまま」 【正】食べられない理由(口腔機能・感覚過敏・不安など)がある
【誤】お腹が空けばそのうち食べる 【正】緊張・不安があると、空腹でも食べられない
【誤】親の育て方・甘やかしのせい 【正】親の養育要因は3歳以降ほぼ0%。原因は他にある
【誤】ひと口だけでも食べさせた方がいい 【正】圧力は逆効果。スモールステップが有効
【誤】食べないから体が小さい 【正】少食の特性は約7割が遺伝。因果が逆のことも

よくある質問(Q&A)

Q1. 誤解だと分かっても、周りの先生や保護者に理解されません。どうすればいいですか?

A.今回の図解資料を活用してみてください。

「口で説明しても伝わりにくい」という場合は、今回のイラスト付き資料を印刷して共有するのがおすすめです。研究の根拠も記載されているので、「感覚的な意見」ではなく「科学的な事実」として伝えやすくなります。

職員室に掲示したり、保護者向けのおたよりに同封したりする活用方法もあります。

Q2. 「わがまま」ではないと分かっても、実際どう対応すればいいか分かりません。

A.まずは「食べられない理由」を探ることから始めましょう。

以下のような視点で観察してみてください。

  • 特定の食感・におい・温度が苦手ではないか?
  • 初めての料理に警戒していないか?
  • 食事の時間や環境に緊張していないか?
  • 過去に嫌な経験(吐いた、怒られた等)がないか?

理由が分かれば、対応の方向性も見えてきます。具体的な声かけについては、「食べない子になんて声をかけたらいい?」の記事も参考にしてください。

Q3. 「ひと口だけ」もダメなら、どうやって新しい食べ物に慣れさせればいいですか?

A.「食べる」以外のスモールステップを試してみましょう。

いきなり「食べる」を目標にするのではなく、以下のようなステップを踏むと、食への抵抗感が減りやすくなります。

  1. 見る:お皿に乗っている状態を見るだけでOK
  2. においをかぐ:「どんなにおいがする?」と聞いてみる
  3. 触る:手やフォークで触ってみる
  4. 唇につける:舐めるだけ、唇に触れるだけ
  5. ひと口食べてみる:ここで初めて「食べる」

「今日はにおいをかげたね!」と、小さな一歩を認めることが大切です。

Q4. 少食の子には、どれくらいの量を盛ればいいですか?

A.その子が無理なく食べられると感じる量からスタートするのがおすすめです。

最初から標準量を盛ると「全部食べられなかった」という失敗体験になりがちです。

まずは本人が「これなら食べられる」と思える量を一緒に決め、食べられた達成感を積み重ねることで、少しずつ食べられる量が増えていくケースが多いです。

「減らしたら残食が増えるのでは?」と心配になるかもしれませんが、無理に食べさせて食事が嫌いになる方が、長期的には逆効果です。

Q5. この資料は園内・校内、保護者への配布など自由に使っていいですか?

A.はい、無料で印刷・配布OKです。

きゅうけんの資料は、園内・校内での印刷・配布は自由にお使いいただけます。職員研修の資料として、保護者へのおたより同封として、ご自由にご活用ください。

ただし、資料自体を販売する、自作のものとして公開するなどはご遠慮ください。

最後に

今回は「食べない子」によくある5つの誤解と、正しい理解についてお伝えしました。

  • 食べないのは「わがまま」ではなく、食べられない理由がある
  • お腹が空いても、緊張や不安があると食べられない
  • 親の育て方のせいではない
  • 圧力をかけて食べさせるのは逆効果
  • 少食の特性は遺伝的な要因が大きい

これらの誤解に気づくだけでも、子どもへの声かけや関わり方は変わってきます。

「なんで食べないの?」ではなく「何が食べにくいのかな?」という視点で、子どもと一緒に「食べられる」を増やしていく関わりを目指してみてください。

今回の資料が、先生や保護者の皆さんのお役に立てれば幸いです。

来月号は「きゅうけんWEB新聞」でのインタビュー記事配信を予定しています!ぜひフォローして来月号の配信をお待ちください!

参考文献

  1. 日本歯科医学会:口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方(令和6年3月)
  2. Dop D, et al.:Rev. Chim. 2020;71(2):39-44.
  3. Waxenbaum JA, et al.:StatPearls [Internet] 2025.
  4. Nas Z, et al.:J Child Psychol Psychiatry 2025;66(2):241-252.
  5. Galloway AT, et al.:Appetite 2006;46(3):318-323.
  6. Llewellyn CH, et al.:Am J Clin Nutr 2010;91(5):1172-1179.

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本記事の担当編集者
山口 健太

『月刊給食指導研修資料|きゅうけん』 編集長
株式会社日本教育資料 代表取締役
一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会 代表理事
食べない子専門カウンセラー

岩手県盛岡市出身。学生時に「会食恐怖症」を発症し、他人と食事ができなくなった経験を持ち、2016年末から支援活動を始める。その中で「食べられない」ことへの適切な対応や支援が、子どもたちと関わる教育者に広まっていないことを痛感。専門カウンセラーとして3,000件超を個別支援し、問題解決に導いてきた。2020年にメディア「きゅうけん|月刊給食指導研修資料」を立ち上げ「楽しく食べることが、社会の幸せを作る」という思いで活動している。食育の講演や研修を累計100回以上(のべ1万名)以上に実施。

著書に、『食べない子が変わる魔法の言葉』(辰巳出版)ほか8冊、海外でも翻訳出版され、国際的にも影響を与えている。

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