毎月、先生や我が子の給食に悩む保護者のための給食指導に関する情報を、分かりやすく1枚のイラスト付きの図解資料にまとめ、文章でも詳しくお届けします。
資料はご自由に印刷していただいて構いません。小中学校・保育所での給食指導、クラス担任を持つ先生へ配布する資料としてご活用できます。職員室内・職員会議にて、全職員に回覧していただくことで、組織全体の業務改善・トラブル回避にもつながります。(資料のダウンロードリンクは目次のすぐ下にあります。)
今回取り上げるのは、最近ニュースでもよく報道されている「子どもの食事の詰まり」についてです。
今月から連続で、未然に防ぐ予防の観点、喉に詰まってしまったらどう対応したらいいか、事後トラウマになってしまわないよう心のケアについてもお伝えしていきます。
今回のイラスト付き資料のダウンロード
※「食事の詰まりから子どもを守る!①(予防編)」のPDFはこちらから保存・ダウンロード
※「食事の詰まりから子どもを守る!②(対応編)」のPDFはこちらから保存・ダウンロード
※「食事の詰まりから子どもを守る!③(心のケア編)」のPDFはこちらから保存・ダウンロード
まずは予防の視点を手に入れよう
食事を喉に詰まらせてしまうことは、子どもにとっても、それを見守る大人にとっても怖いものです。
今回からは「食事の詰まりから子どもを守る」をテーマにしていきます。まず最初に、予防に対しての基本的な内容をお伝えします。
“詰まり“が起きてしまう大きな原因
食事を喉に詰まらせてしまうのには、さまざまな原因がありますが、その中の1つに「機能的な理由」があります。
具体的には、今のその子の口腔機能の発達段階と、食べ物や食形態のミスマッチが起きてしまうと、食事を喉に詰まらせてしまうことがあります。
ですから、
(1)提供する食材や食形態に気をつける
(2)口腔機能の獲得をサポートする
という視点をまずは持つようにしましょう。
注意したい食材・食形態について知ろう
こども家庭庁『教育・保育施設等における事故防止及び 事故発生時の対応のためのガイドライン【事故防止のための取組み】 ~施設・事業者向け~(平成28年3月31日)』を参考にすると、注意したい食材・食形態は上記のようなものが挙げられています。
①給食での使用を避ける食材
例:プチトマト(4等分すれば提供可能であるが、保育園では他のものに代替え)
②0~1歳児クラスは避ける食材
例:えび、貝類(除いて別に調理する)
③調理や切り方を工夫する食材
例:ソーセージ(縦半分に切って使用)
④食べさせる時に配慮が必要な食材
例:ごはん、パン(水分を取ってのどを潤してから食べること、つめ込みすぎないこと)
⑤果物について(提供する際の注意点)
例:りんご(完了期までは加熱して提供する)
※例は記載内容を一部抜粋して掲載
保育園で調理に関わる方などは、ガイドラインに一度目を通しておきましょう。
口腔機能の獲得について知ろう
食べることに関する機能的な動きは、本能的に備わっているものではなく、離乳食期から段階的に獲得していくものです。具体的には、以下のようなステップを経て、少しずつ獲得していきます。
ステップ①
なめらかにすりつぶした状態のものは食べられる
ステップ②
舌で押し潰すことができるものや、舌を使って送り込むだけで飲み込めるものは食べられる
ステップ③
歯茎でつぶせるくらいの硬さのものは食べられる
これらのステップを経た後に、次第に奥歯ですりつぶしができるようになり、繊維質なものやパサついたものも食べられるようになっていきます。
また、食べる姿勢なども大切です。以下のポイントをチェックしてみましょう。
これらの機能的な理由について、さらに詳しくは「【図解】子どもの食事に時間がかかる1番の原因?機能的な問題について」という解説記事を参考にしてください。
観察して危険なNG食べに気づこう
誤嚥や窒息は、食べ方も大きく関係しています。
以下は、危険なNG食べの例です。
- 立ち歩きながら食べている
- 泣きながら食べている
- 遊びながら食べている
- 競争して食べている
- 食べるときの姿勢が崩れている
- 食べ物を大量に口に入れている
- 飲み物で食べ物を流し込もうとする
- 咀嚼せず吸って食べている
子どもの口に食べ物が入っている時に、大声で怒鳴ってしまうと、それに驚き食べ物を喉に詰まらせてしまうこともあります。怒鳴ることなく、肯定語でしてほしいことを伝えましょう。その他、食事中の声かけについては「【保育園・小学校】子どもへの食事における声かけ変換表①&②」の記事で詳しくまとめています。
また、大人が子どもに食事を与える際に気をつけたいのは以下のようなポイントになります。
次に窒息時の対応について知ろう
子どもは食べ物を喉に詰まらせることがあり、その時の周りの大人の対応次第で、大きな事故を防ぐことができます。
一方で、そのような緊急事態には、大人側も慌ててしまい、落ち着いて対応ができない可能性もあります。ですから、今回の記事の内容をあらかじめ知っておき、園・学校の職員内で共有しておくことが大切です。
サインに気づこう
子どもは食事中に、咳き込んだりすることがありますが、窒息が疑われるサインとして
- 顔色が悪くなる
- よだれを垂らす
- 苦しそうな顔で声が出せなくなる
- 親指と人差し指で喉をつかむ
などがあり、緊急での対応が必要です。
窒息の可能性がある場合の対応
1.他の職員を呼び、119番に「救急、窒息、意識の有無」を直ぐに連絡します。
2.救急隊が到着するまでの間、子ども本人に対して以下の方法で、詰まったものの除去を試みます。
(食べ物が奥に詰まる可能性があるため、子どもの口の中に指は絶対に入れない)
1歳未満の場合
背部叩打法
1歳未満の場合には、救護者が膝を曲げ(もしくは椅子に座り)、太ももの上に子どもをうつ伏せに抱きあげます。この体勢で、子どもの背中の肩甲骨の間のあたりを手のひらで5~6回強く叩き、詰まった食品を吐き出させる背部叩打法が有効です。
胸部突き上げ法
他にも、自分の片腕に乳児の背中を乗せ、手のひらで乳児の後頭部をしっかり支えながら、頭側を下げるように仰向けの姿勢にし、もう一方の手の指2本で両乳頭(乳首)を結ぶ線の少し足側を目安とする下半分を力強く数回連続して圧迫する胸部突き上げ法も有効です。※背部叩打法と組み合わせて繰り返します。
1歳以上の場合
1歳以上の場合には、子どもの背中側から救護者の両手を回し、みぞおちの前で両手を組んで、勢い良く両手を絞ってぎゅっと押すことで、詰まった食品を吐き出させる腹部突き上げ法も有効です。※背部叩打法と組み合わせて繰り返します。
動画で確認し対応を共有しておこう
適切な対応は喉のどの部分で詰まっているか、基礎疾患の有無で変わることがあります。詳しくは必ず一度以下の動画を見ておきましょう。
さらに、いざという時に対応がスムーズにできるよう、事前に窒息時の対応に関する対応やマニュアルを、必ず事前に園や学校内で共有しておきましょう。
トラウマから回復するために
子どもは食事を喉に詰まらせると、それが強烈な体験として記憶に残り、数週間〜数か月の間、食べるのが怖くなったり、食欲がなくなったりすることがあります。その時に周りの大人はどのように対応したらいいのでしょうか?
ここから、そのような詰まらせた経験をした後で、食欲が戻るまでの対応のポイントを主にお伝えしていきます。
事後ケアのポイント
やってはいけないのは「食べないことを怒る、責めること」です。
子どもは「食べるとまた詰まらせるのではないか」という恐怖で、安心して食べられない状況です。まずは安心して食べられることを最優先に考えるようにしましょう。
声かけは、「まずはペロッとだけしてみよう」、「食べられそうだったら食べてみて」、「口に入れてみて、もし飲み込めなかったら、ここ(お皿など)に出してもいいからね」という声かけの方が、安心して食べることができます。
一方で「これなら大丈夫そう?」、「気をつけて食べてね」など、心配しながら声をかけるとさらに嚥下を意識してしまい、飲み込みにくくなることがありますので注意しましょう。
食事の提供に関しては、いま安心して食べられるものをベースに、食事を提供していきます。その子の好きなものだと「食べるのが怖い」よりも「食べたい」が上回りやすく、食欲が湧き、食べられることも多いです。
好きなものや安心して食べられるものをベースに、時間をかけて、以前の食事に戻していくことが大切です。給食の場合は、個別対応できないケースも多いので、給食の場面で無理に食べさせることはせず、保護者への情報伝達や連携を大切にしましょう。
不安になったら確認しよう
食べられない期間が長く続くことで、大人が不安になるのはその子の健康状態や、発育・発達に影響が出ることだと思います。
栄養面が不安なときは、成長曲線と照らし合わせて、体重が極端に減少していないか、発育が極端に止まっていないかを確認しましょう。
詳しくは「図解.食べない子の栄養は大丈夫?」を参考にしてください。
また、食事以外の場面に目を向けて、元気に遊ぶ、楽しく過ごせているかを確認しましょう。
A.病院に行ってお医者さんから「普通に食べても大丈夫だよ」などと言われると、安心して食べられるきっかけにもなることもあります。「病院に行ってみる?」と子どもに聞いてみるのがまずはオススメです。。
最後に
3ヶ月連続で、子どもの食事の詰まりについて扱っていきました。
ぜひ職員同士での情報共有や、先生と保護者との情報伝達にイラスト付きの資料をお使いください。
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また来月号も楽しみにお待ちください。
・日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会.”食品による窒息子どもを守るためにできること”.公益社団法人日本小児科学会. 令和5年12月10日
・こども家庭庁.”教育・保育施設等における事故防止及び 事故発生時の対応のためのガイドライン【事故防止のための取組み】 ~施設・事業者向け~”.平成28年3月31日
・文部科学省.”食に関する指導の手引-第二次改訂版-”平成31年3月
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