【根拠】子どもが食べられないのには理由(口腔機能、感覚過敏、過去の嫌な経験、家庭での習慣など)がある。無理に食べさせようとすると嫌悪感が強まり、食事の時間が親子ともに苦痛になる。
【本記事を読むメリット】保護者を追い詰めずに協力関係を築ける「伝え方」や保護者に配布するおすすめ資料も紹介。
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※Vol.55『「食べられるようにして」で困らせていませんか?(右クリックで保存できます)
入学・入園前などのタイミングで、家庭に対して「好き嫌いなく食べられるようにしてきてください」と伝えていませんか?
実はこの言葉が、保護者を追い詰めてしまうことがあります。
今回は、保護者の本音や困りごとを理解した上で、子どもの「食べてみようかな」を育てるために先生が伝えられる『安心の3点セット』について解説します。
「食べられるようにしてきて」で保護者を追い詰めていませんか?
結論:多くの保護者はすでに様々な工夫をしている。それでも食べられず、困っている。
「好き嫌いなく食べられるようにしてきてください」
入園・入学前の説明会や面談で、こう伝えたことがある先生は多いかもしれません。もちろん、子どもの健康や集団生活への適応を願う気持ちからの言葉だと思います。
ですが、この言葉を受け取る保護者の中には、すでに家庭で様々な工夫をしている方が少なくありません。
たとえば、こんな声があります。
小学校から配布された「入学に向けて」という資料に「家庭生活の中で好き嫌いなく食べられるように」という記載があり、すごくプレッシャーに感じた。「小食・偏食のうちの子にちゃんとさせないと。でもどうすればいいんだろう」という気持ちになり苦しくなりました。
小学校の入学説明会で「苦手なものがあったら家でチャレンジさせてきてください」と言われ「これができていないとスタートラインに立てないのか」と焦り、苦しくなりました。周りの子はみんなできているんだと思うと、汗が出るほど辛かったです。
このように、
- 「今までも頑張ってきたのに…」
- 「作っても一口も食べないのに…」
- 「これ以上どうすればいいの…」

多くの保護者は、すでに様々な工夫をしています。それでも食べられず、困っているかもしれません。
そんな状況で「食べられるようにしてきてください」と言われると、自分の育て方が悪いのではないか、もっと厳しくしなければいけないのではないかと、自分を責めてしまう保護者もいます。
また「園や学校に迷惑をかけてしまう」というプレッシャーから、無理に食べさせようとしてしまい、結果として子どもの食への嫌悪感が強まるという悪循環に陥ることもあるのです。
なぜ「挑戦させてきて」では難しいのか?
結論:子どもが食べられないのには「理由」がある。無理に食べさせようとすると、逆効果になることも。
「初めての食材は、アレルギー確認のため家庭で一度試しておいてください」と伝えることは、多くの園や学校で行われている対応です。園や学校で初めて食べた食材でアレルギーを発症するリスクを避けるため、現場レベルのリスク管理策として広く実践されています。なお、食物アレルギーへの公式な対応は、医師の診断に基づく「生活管理指導表」によって行われます。
子どもが食べられないのには、必ず理由があります。

たとえば、以下のようなものです。
- 口腔機能の問題:噛む力や飲み込む力がまだ発達途中で、物理的に食べにくい。
- 感覚的な苦手:食感、におい、見た目などに敏感で、特定の食べ物に強い抵抗を感じる。
- 過去の嫌な経験:以前に無理に食べさせられた、吐いてしまったなどの記憶が残っている。
- 家庭での習慣の問題:食事の時間が不規則だったり、好きなものの量が多すぎたりして、食べにくい環境になっている。

本来大切なのは「食べられない理由」に対しての適切なアプローチをすること。
「入園までに食べられるようにしてきてね」と伝えても、保護者も子ども自身も、どうしていいか分からないことがほとんどです。
保護者に伝えたい『安心の3点セット』
結論:以下の3つのメッセージを伝えることで、保護者の不安が和らぎ、家庭との協力関係が築ける。
入園・入学前に保護者へ伝えたいのは「食べられるようにしてきてください」ではなく、安心感を与える3つのメッセージです。

この3つを「安心の3点セット」として、ぜひ覚えておいてください。
「苦手があっても大丈夫」と伝えよう
例:「苦手なものがあっても大丈夫ですよ。焦らず関わっていきましょう」
保護者の中には、「うちの子だけ食べられなかったらどうしよう」と不安を抱えている方が多くいます。
まずは「苦手があっても大丈夫」と伝えることで、保護者の肩の力が抜け、安心して入園・入学を迎えられるようになります。
「食べなくてもできることがある」と伝えよう
例:「献立を見て会話する、食材を見せる、食卓に並べてみる。そんな関わりが、第一歩になります」
「食べさせなければ」と思うと、保護者も子どもも追い詰められてしまいます。
実は、食べることの前に「知る」「興味を持つ」「触れる」といったステップがあります。家庭では、食べさせることよりも、食に触れる機会を作ることを意識してもらえれば十分です。
「困ったら相談してね」と伝えよう
例:「心配なことがあれば、いつでも相談してくださいね」
保護者が一人で抱え込まないように、「いつでも相談できる」という安心感を伝えておくことが大切です。
入園・入学後も、家庭と園・学校が協力して子どもを見守っていく関係性を築く第一歩になります。
①だけで終わると「園・学校がなんとかしてくれる」と誤解されることも。「家庭でもできること」「一緒に考えること」も伝えると、協力関係を築けます。
この3点は、入園・入学前の面談や説明会で口頭で伝えるだけでなく、「配布資料」として渡すのもオススメです。
【保護者向け配布資料】「食べない子が変わる5つのステップ」
結論:「食べられない」→「食べられる」には5つのステップがある。この考え方を保護者と共有することで、家庭でも焦らず見守れるようになる。
保護者に向けて具体的な指針の一つになるのが、「食べない子が変わる5つのステップ」という考え方です。
5つのステップとは?
「食べられない」から「食べられる」に変わるまでには、大きく分けて以下の5つのステップがあります。
- 知らない:その食材や料理の存在を知らない
- 知る:名前や見た目を知る
- 興味を持つ:「どんな味だろう?」と気になる
- 触れる:においを嗅ぐ、触る、舐めてみる
- 食べる:ひと口食べてみる→安心して食べられる

1つの食材を食べられるようになるには、半年〜数年かかる場合もあります。焦らず、長い目で見守ることが大切です。
保護者への伝え方のコツ
この「5つのステップ」を保護者に伝える際は、以下のように添えると効果的です。
「園(学校)でも、この5つのステップを意識しながら、お子さんのペースに合わせて関わっていきます。ご家庭でも同じ考え方で見守っていただけると、お子さんも安心して食に向き合えるようになりますよ。」
園・学校と家庭が同じ考え方で子どもを見守っているということが伝わると、保護者の安心感がさらに高まり、協力関係も深まります。
▶︎「食べない子が変わる5つのステップ」資料のダウンロードはこちらから(無償で印刷・配布OKです)
「5つのステップ」についての詳しい解説は「【図解】食べない子になんて声をかけたらいい?」でも紹介していますので、ご覧ください。
よくある質問(Q&A)
Q1. 入園・入学前後の面談で保護者に何を確認すればいい?
A. 給食が不安な子には、以下のような点を確認しておくと、その後の対応がスムーズになります。
- 食べられないもの、苦手なものはあるか、アレルギー
- 過去に食事で嫌な経験(嘔吐、無理強いなど)はあるか
- 家庭での食事の様子(時間、量、食べ方など)
- 保護者が特に心配していること
確認した上で、「安心の3点セット」を伝えて、協力関係を築く姿勢を示しましょう。
Q2. アレルギーではないのに個別対応していいの?
A. アレルギー以外の理由(感覚過敏、口腔機能、過去の嫌な経験など)でも、個別対応は「必要な支援」です。厚生労働省・文部科学省のガイドラインでも、偏食を含む食に関する個別的な相談・指導の必要性が明記されています。詳しくは「食べない子への個別対応は『ずるい』こと?」をご覧ください。
Q3. 「5つのステップ」を保護者に伝えるタイミングは?
A. 入園・入学前の面談や説明会が理想的ですが、入園後の個別面談や、給食だより・保健だよりで紹介するのも効果的です。「園(学校)でもこの考え方で支援しています」と伝えることで、家庭との連携がスムーズになります。
Q4. 保護者からの要望に応えきれない場合はどうすればいい?
A. すべての要望に応えられないこともあります。その場合は、「できること」と「できないこと」を明確に伝えた上で、「一緒に考えていきましょう」という姿勢を示すことが大切です。たとえば「完全に除去することは難しいですが、量を減らして様子を見ることはできます」など、代替案を提示すると保護者も安心しやすくなります。詳しくは「保護者から多い要望と対応&伝えるポイント」もご覧ください。
Q5. 『安心の3点セット』を伝えても、保護者がまだ不安そうな場合は?
A. 不安が強い保護者には、「入園後も様子を見ながら一緒に考えていきましょう」と伝え、継続的なサポートの姿勢を示すことが大切です。また、「5つのステップ」の資料を渡して、家庭でも具体的に何ができるかをイメージしてもらうのも効果的です。「困ったらいつでも相談してくださいね」と添えることで、保護者の安心感が高まります。
Q6. 「家庭で食べさせてきて」はアレルギー対応でも言ってはいけないの?
A. いいえ、アレルギー対応は別の話です。「初めての食材は、アレルギー確認のため家庭で一度試しておいてください」と伝えることは、多くの園や学校で行われている対応です。園や学校で初めて食べた食材でアレルギーを発症するリスクを避けるため、現場レベルのリスク管理策として広く実践されています。
最後に
今月号はいかがでしたか?
入園・入学を控えたこの時期、保護者も先生も「給食、大丈夫かな……」と不安を感じやすい時期です。だからこそ、先生側から保護者へ「安心の3点セット」を伝えることで、保護者の心が軽くなり、家庭との協力関係を築く第一歩になります。
「苦手があっても大丈夫」「食べなくてもできることがある」「困ったら相談してね」この3つのメッセージを、ぜひ入園・入学前の面談や説明会で伝えてみてください。
あなたの「大丈夫だよ」という一言が、子どもと保護者の給食への不安を、安心に変えます。もし、この記事が参考になったと感じたら、同僚の先生や、悩んでいる保護者にもぜひシェアしていただけると嬉しいです。
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